第3話:陽キャ少女と陰キャオタク
朝から痴漢を捕まえたり、柊さんと出会ったりと、波乱はあったが遅刻はせず学校に到着した。
掲示板でクラスを把握すると、普通科2組との事だ。
(ここは前世と同じか……)
持ってきた新品の上履きに履き替え2階へ行く、一年生の普通科は2階にあるのだ。
クラスに到着し、開けっ放しになっている後ろのドアから入る、黒板に書かれた座席を確認すると窓際の後から3つ目の席らしい、クラスメイトは全員同じなのだが、隣の席の子は前世とは違った。
とりあえずLHR(ロングホームルーム)まで10分程なのてラノベを読みつつ待っていると隣から声がかかる。
「ねぇねぇ、何読んでるの?」
「ラノベ……」
「へぇ~それ面白い?」
「面白いよ、丁度熱い場面だし」
「へぇ~どんな場面なの?」
「親の仇と親友の仇と恋人の仇と愛犬の仇が同じ敵だったから、ソイツとの決戦の場面」
「少年マンガでもあるようなめっちゃ熱いシーンじゃん! それラストスパート?」
「いや、開始5ページ目」
そう言いながらラノベを見せると、隣の席の少女、
「リアクション芸人金字塔のD川さんも顔負けの、良いずっこけじゃないか」
「ありがとう、微妙な褒め言葉……」
「どういたしまして、お嬢様に喜んで頂けて、こちらも至上の喜びでございます」
そう言いながら慇懃無礼かつオーバーリアクションで、頭を下げる。
「うわーかーなりムカつく……それ絶対に思ってないでしょ!」
「ははは、ついつい反応が気持ち良くてな、えっと……」
名前は知っているが、知らない体でパスを出す。
「
「
そう言いつつ右手を差し出す
「えぇ……握手したくない……」
失礼に扱い過ぎたのか、拒否られる。
「えっ……あっ……ごめんなさい、調子乗りました」
「ゴメンゴメン、冗談だよ。嫌じゃないから〜」
言いながら柊は手を取ってくる。
「これから一年間ヨロシクね! 翔」
名前の様な爽やかな笑顔で、返してくる。
(眩しい……これが陽キャパワーか……)
前世でも、厨二陰キャの俺に仲良くしてくれた、彼女の眩しさに目を細める。
―――♬♪♫♩———
丁度LHR開始のチャイムが鳴ると同時に先生が入って来る、担任の先生も変わらない。
その後、全員が自己紹介をつつがなく終わらせると、年間イベントの説明やシラバスを渡されLHRは終了した。
そうして先生が去り際に爆弾を落としていった。
「そうだ、言い忘れてた……来週の頭、つまり月曜日だな。オリエンテーションがあるぞ、2泊3日で」
「「「「「「ええええええええええええ!?」」」」」」
なんだ……今回もあるじゃん、オリエンテーション。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「ねえねえ!! 翔は」
「何? 柊さん、いきなり……」
「いやー、オリエンテーション。組みたい人居ないのかなーって」
凄くワクワクした顔でこちらに問いかけて来る柊さん……圧が強い……
「特には……この高校進学したは良いけど、同じ学校から来た人が少なくてね」
「なんだーつまんないなー」
「あはは……柊さんは?」
「私?私かぁ……どうしよう、翔は確定だし……」
(ん? 今なんて?)
「なら私は?檸檬」
その声に振り返ると、柊さんと同じくらいの身長の女子が居た。
「ひとみん? 良いの?」
「良いも何も……中学時代の貴女は、私のライバルだったけど。今年から同じ学校で同じ部活の仲間でしょう」
「わーい、ありがと~ひとみん!」
ひとみんさんに抱き付く柊さん。
「ちょ! やめなさい檸檬さん!」
「え~いいじゃーん!」
見目麗しい女子二人がいちゃついてるのいいなぁ……眼福眼福。
「少し良いかな?」
そんな二人を見ていると、後ろから眼鏡男子に声を掛けられた。
「えっと……どちら様?」
「そこの柊さんに抱き付かれてる女子の幼馴染で。
「あっ、これはどうもご丁寧に」
「あ~進藤君!お久しぶり!!」
「久しぶり、柊さん」
「皆、知り合いなのか……」
「まぁ、ずっとテニスをやってたからね、あの二人は全国常連なんだ」
「へぇ~、じゃあ俺の妹とも戦ってたかもしれないね……」
「妹……佐伯……ってまさか佐伯
「由愛さんって……知ってるのか?」
「あぁ……あの二人と互角に戦える強さを持ってる、かなり強いプレーヤーだよ」
「へぇ……知らなかった……」
我が妹、よお前のお陰で友達が出来そうだ。
「俺もびびったよ……あの
「あはは……中学の頃は引き籠りだったから……」
「そうだったのか……悪い事聞いた」
そう言うと進藤は、少し気まずそうな顔をした。
「あっ、勘違いしないでくれ、ちょっと痛い病を患っててな……」
「なんとなくわかった……」
「わかってくれて、ありがたいよ」
「それで、あの二人勝手に決めちゃってるけど。オリエンテーションのメンバーは、これで良いのかい?」
「あぁ、大丈夫だよ俺は」
既にクラス内でも、同じ中学出身で仲の良い人達が揃い、グループが決まりつつあるし。ここで放り出されても余り者’sになるだけだしな。
「良かった。二人共、佐伯君は大丈夫だって」
「そうなの?よかった~」
「すみません、勝手に決めてしまい……」
「あはは……大丈夫ですよ、それでえっと……」
「
「えっと……俺は
そう言うと弓場さんの眉がピクリと動いた。
「佐伯……佐伯……ってまさか!?佐伯
「え!
釣り目になる弓場さんと、目をキラキラさせる柊さん。
弓場さんに何したんだ妹よ……
「ごめん、妹が何か迷惑かけたのかな?」
「何もかにも!!最後の大会でコテンパンにされたのよ!!」
えぇ……この場合はどうしよう、別に由愛は悪い事してないよな。
「あーうん、妹がすまない……」
「謝らないで頂戴、負けたのは私が原因だから妹さんには何も思って無いわ……リベンジマッチはしたいけど……ともかく!私がその時自分が負けた理由が、自分のミスでくだらない事だったのが気に食わないのよ!」
「そうか……原因は差し支えなければ……」
「止めて頂戴、あれは人生の汚点だわ……」
うん、これ以上は聞かないでおこう……。
「ともかく、今度機会があったら練習でも見てやってくれ、由愛も喜ぶだろうし」
「いいよ~」
「えぇ、任せて!」
二人が気持ちよく返事をしてくれる。
「それで、二人は今日どうするんだ? 男子テニスの1年生は、オリエンテーションが終わるまで、お休みらしいんだけど」
「女テニもだよ~オリエンテーション終わるまで、一年はお休みみたい」
「でも少し、体を動かしたいですね」
「それだったら……俺の地元駅にスポーツできる大きな施設があるぞ」
「佐伯さんの地元駅を知らないのですが……施設があるとなると隣町ですか?」
「それってこの間テレビで特集してた【ビューン】とこ?」
「確かクライミングとか、トランポリンとか、エアウォークがあったり、目玉として超巨大なエアバルーンの障害物走が出来るとこだっけ?」
「確かそんな感じのとこ、由愛が凄く行きたがってたから覚えてる。」
「じゃあ皆で行きましょうか」
「そうだ、真白達も呼んでいい?」
(ん? 真白? まさかね……)
頭に今朝出会った少女が浮かぶ
「置いて行くつもりだったんですか?」
「てっきり強制連行するのかとおもってたけど……」
「えぇ!?そこまで鬼じゃないよ!?」
「「え?」」
「何で二人して、「何を冗談を」みたいな感じで見てるのよ!!」
「「何を冗談を」」
「むっきーーーーいぃ! 良いもん良いもん! 翔と一緒に行くもん!!」
そう言って腕に抱きていてくる柊さん、慎ましいけどふくよかな感触が二の腕に伝わる。
「え?俺も行くの?」
「せっかくこうしてオリエンテーションの班になったんだから、親交を深めないと……」
「親交を深めるために、オリエンテーションに行くんだけど……」
「そーだよー!いこーよ!」
そう言って背中に乗っかってくる柊さん、柔らかい感触と柑橘系の香りがする。
「まぁ、いいか……」
「やたー!! じゃあしゅぱつだー!!」
「あっちょっと檸檬! 鞄!!」
やたらテンションの高い柊さんと、それをフォローする弓場さんに続き。俺と進藤は追いかけながら教室を出た。
---------------------------------
作者です!
読んでいただきありがとうございます!!
早速☆や♡、ブックマークをくれた読者様ありがとうございます!!
全部が作者の原動力になります!!
檸檬ちゃんのキャラクターイメージを近況ノートに掲示しました!
https://kakuyomu.jp/users/fearice/news/16817330668675010867
https://kakuyomu.jp/users/fearice/news/16817330668675012569
姉の真白に対して妹が檸檬という名前なのですが二人共誕生日が夏だったので夏っぽい名前にするはずが、アルビノの真白を見た両親が『真白』と名付けて、夏っぽいけど冬が旬の果物から『檸檬』になりました。
他の候補は『柚子』と甘夏からもじった『
皆様のおかげでランキングにも乗れました!!
日間:150位
週刊:502位
カクヨムコン
ジャンル別:271位
総合:1312位
ここから上がって欲しい!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます