第14話 甘く蕩けるキス

「お、おお……ここがラブホテル……」


 自分から永遠さんを連れてきておきながら、その煌びやかな部屋を目にして一気に正気が戻ってくる。


「初めてですか? ホテルに入るのは」

「う、うん……そうだね……」


 正直、自分とは縁遠いところのように感じていた。

 元彼女とは外でそんな雰囲気にならなかったし……。


 永遠さんさ悠々自適なようすで部屋の奥へと踏み入る。


 大きなスクリーンはなぜか最初から起動していて、知らない女性の喘ぎ声が響いていた。


(AVかよ!?)


 とたんに居た堪れない気持ちが湧く。


「これは消しましょうか」


 俺を気遣ってか、永遠さんはすぐさまリモコンでスイッチを切った。


 静かになってひと安心——したのも束の間、それはそれで緊張を煽る。


 アパートの部屋でだっていつも2人きりなのに、このホテルの一室の2人きりとはまったく意味が違うように思えた。


 だってここは、2人で暮らす場所じゃない。


 セッ○スをするための場所だ。

 

「と、永遠さんは平気そうだね。もしかしてこういうところ、慣れてる……?」


「そんなことはありませんよ。初めてです」


「え……? そうなんだ?」


 少し意外な返答に驚いてしまう。


 永遠さんのような大人の女性なら、やはりそういう経験も豊富なのだろうと……


「伊月さんに嘘は言いません」


 永遠さんはこちらへ歩み寄る。


「ほら」


 俺の手を取ると、自らの左胸へ押し付けた。


「どきどき。どきどき」


 肌で感じるマシュマロのような柔らかさ。


 そして、激しい心音。

 余裕そうな顔をしながらも、鼓動はこんなにも脈打っていた。


 永遠さんへ視線を寄せる。

 すると、わずかに恥ずかしそうに瞳を伏せて、微笑んだ。


「鳴り止まないんです」

「そ、そっか……」


 なぜだろう。

 彼女も緊張しているのだとわかって、不慣れなのだと知って、モヤモヤが晴れる。


「伊月さんも、ですか?」

「うん……」

「確かめたいです」


 永遠さんの手のひらが左胸へ当てられる。


「どきどき。どきどき。もしかして今、さらに強くなりましたか?」


「永遠さんが触るからだよ」


「ふふっ」


 静かな部屋でひっそり笑い合うと、なんだかいい雰囲気なのが本能的に感じ取れた。

 

「————ちゅ」


 次の瞬間、永遠さんは俺の胸にしなだれて、背伸びをしながらキスをする。


「と、永遠さんっ!?」

「キスは、初めてですよね。私たち」


 唇を離した永遠さんはうっとりとした表情でとろんとまぶたを落とす。


「よかったの……? キスまでして……」


 セッ○スはしているくせに、キスには恋愛的な感情が必要。そんな薄っぺらい倫理観。


「もちろんです。伊月さんなら、いいですよ」


 そう言って、永遠さんは再びキスをする。


 今度はさっきよりもっとディープでエッチなキス。深く深く舌を絡め合い、はしたなく唾液が垂れて混ざり合い、ふたりの興奮を高め合う。ただただ、快楽を貪っていく。


(キスって、こんなに気持ちいいものだったっけ……?)


 ほろ酔い加減によるものか。

 場所によるものか。

 状況によるものか。


 それとも、永遠さんとしているからなのか。


 そのキスは甘く蕩けて柔らかな痺れを纏い、脳に焼きついてくるかのようで。

 今までしてきたキスの全てを過去にした。


「今夜は寝かせませんよ、伊月さん」


 そっと手を引かれて、ベッドへと押し倒される。

 

 永遠さんは頬を紅潮させて、荒い吐息で銀髪を揺らしていた。


 こんなにも美しくて可愛らしいメイドさんが、俺で発情してくれている。


「誠心誠意、日が昇るまでご奉仕致します♡」


 エッチなメイドさんと、本能の赴くまま、淫猥な世界へ溶けてゆく——。





————————




これ以上は見せられないよ!だから…

消されちゃうから…



☆1000感謝ですm(_ _)m

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