風神ヴェンティ

それから数日は何事もなく過ぎた。ナギサに笑顔が戻ってきていた。


ある日庭に出ていくと『ナギサ、われのもとに来い』その声が聞こえると同時にナギサは疾風に巻き込まれ空高く放り上げられた。


気がつくとそこは石造りの建物の中。ナギサは起き上がり側にサクラとリーフがいるのを確かめた。

『よく来たなナギサ。私は風神ヴェンティそなたをこの国にいざなったもの』

「この国にいざなった。私を国に返してください!」

『それは出来ぬ!』

「何故ですか?」

『この国の王との盟約のためだ。だが、私とて何もせずにおったのではない。リーフ、サクラ、元に戻れ』

光に包まれた二人は背中に羽の生えた男性と女性に戻った。私は唖然として二人を見つめた。

『二人はそなたの護衛と心を支えるよう命を出してある。名前を付けさせたのもその為だ。名はここでは大事なもの。意味が解るか?』

私はうなずいた。二人はリーフとサクラに戻った。

『それと、そのペンダント。それも我がそなたの為にこしらえたもの。それを身に付けている限り、私の加護がそなたに届く』

『王は国を変える為にはこの国とは違う知識が必要と考えた。そこで私が宣託せんたくしそなたがここへ来たのだ』私は王が学校のことを聞いていたのを思い出した。

『ナギサよ、なぜ自分がと言う気持ちは解る。だがこの国のために働いてもらえないだろうか?』

私は、しばらく考えた。帰れないのはつらいが、この国の人には良くしてもらっている。不自由も無い。ふと私の悲しさを理解して側にいてくれたカイトのことが思い出された。カイトと離れたくない。私は決心した。

「承知いたしました。お役に立てるかわかりませんが、帰れないのなら出来ることはしましょう」

『ありがとう。この先もそなたに不自由の無いよう取り計らう事を約束しよう』

「ありがとうございます」

『あまり長くはからだに負担がかかるな、そろそろ戻った方がいい。リーフ、サクラ頼んだぞ』

ぬしおうせのままに』二人が答える。

『さ、家に送ろう』そうヴェンティが言うとまた疾風がナギサを包んだ。


ナギサは気がつくと、自分の部屋のベッドで寝ていた。体がだるい。サクラが暖かい光で私を包む、その心地よさに私は深い眠りへと落ちて行った。






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