第87話 ナーバル地方平定

 アンティーク・ノートから戻ったタイチはみんなの様子を見に行く。


 ロイさんは現在ナーバル村で各村から集まった農業指導者候補に、米作りと野菜つくりを指導している。

「おう、タイチ!」


「ロイさん、どうですか? 順調です?」


「ああ、順調だ。タイチのおかげだ」


「よかった! これでロイさんの作った美味しい野菜が食べられますね」

「ははは、そうかそうか」


「そういえば、もうすぐ川の水が元通りになりますよ」


「タイチ」

「はい、なんでしょう?」


「お前はやっぱりタイチだな」

「なんですかそれ」

 そこにキメナが駆け寄って来る。


「タイチ殿! 川の様子が変わったと報告を受けたのだが」

「ああ、ちょうどよかった。そうなんですよ、源流を元通りにしてきました」

「来ましたってタイチ殿」


「まあまたゆっくり説明しますね。キメナさん、街道整備と騎士団の再訓練は?」

「うむ、順調だ。街道整備は元山賊のやつらもしっかりと働いてくれている。もともと食うに困っての奴らが多かったからな。根は真面目だし衣食住の環境が整えば問題はない。まあ住む場所の課題は残っているがな」

「そうですね。まだ村で一緒にというわけにはいかないでしょうから。それもおいおい考えましょう」

「うむ。騎士団も問題ない。まあしいて言うなら私の訓練相手がいないことくらいが問題だ。手合わせをお願いしたい」


「約束だぞ! では失礼する」

「はい、キメナさん、ロイさん。それではまた後ほど」


 アリアとシャーリーはナーバル村に新しく作った図書館と言ってもまだ小屋だが、そこで子どもたちに勉強を教えている。

「アリアさん、シャーリー」

「あ! あるじ!!」

「タイチさん、戻られたのですね」


「うん、ただいま」

「あるじ! 子どもたちと遊ぶのは楽しいぞ! です」

「うん、良かったね。シャーリーと遊べて子どもたちもきっと喜んでるよ」

「そうか? じゃあ行ってくる!」

 シャーリーは小屋を駆け出して行った。


「タイチさん。なにをされていたんですか?」

「ああ、川の源流に行ってきました。これで水害前のようなきれいな水が流れてくるはずです」


「まあ! ほんとうですか!? ありがとうございます! でも、なにかあったんじゃないですか?」


「あ、いや、そうたいしたことは」


「タイチさん」

「ひゃい!」

 アリアさんに睨まれてしまった。


「私にも話せないようなことが起こっているのでしょうか?」

「いや、そういうわけではなく。えっと」


「タイチさん、私はそんなに頼りにならないんでしょうか」

「いや、そんなことは!」


「じゃあ教えてください」

「あの、実は……」

 タイチは川の源流の祠で起こったことをアリアに話した。


「……ということがありまして」

 話し終えると、アリアの顔は真っ赤になっていた。


「あ、ありがとうございます。でも、あまり一人で抱え込まないでくださいね」

 と少し涙目で言われてしまい慌てて謝った。


「アリアさん、約束しましたよね?」

「はい。タイチさんはこの村を救ってくれました。それどころかこの地方を」


「まだまだこれからです。アリアさん、これからも手伝ってもらえますか?」

「もちろんです! どこまでもついていきます」


「じゃあ、よろしくおねがいします」

 こうしてナーバル地方の平定は進んでいく。


 図書券スキルを持つ少年タイチの物語はここから聖王国全体を巻き込んでいく。


(完)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

図書券スキルで異世界開拓! UD @UdAsato

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ