第80話 気になること

「いや、僕はぼくで皆さんに助けてもらいましたから。せめて恩返しに出来ることをって思ってやって来ただけですから」


「あるじ、強いのがいい、です」


「ありがとうシャーリー。シャーリーにも助けてもらってるね」


「タイチ殿。我々騎士団もタイチ殿に助けてもらった恩がある。我が騎士団の主となるにふさわしい強さと優しさだ。我々はタイチ殿の治めるこのナーバル地方を全力で守り抜くぞ」


「キメナさん、ありがとうございます」

 タイチは向き直し


「ありがとうございます。まさか僕がこんなことをやることになるなんて思いもしませんでしたが、仲間のみんなの協力、村長さんたちの協力、そしてなによりもこのナーバル地方に暮らすみんなの安心と安全を守るためにやれることをやってみようと思います」


 そう言うと、村長たちも騎士たちも拍手をもって応えてくれた。


「では、早速取り掛かりましょうか」

 そう言って立ち上がると、村長たちが

「タイチ君、なにから始めるんだね?」


「そうですね、まずは街道の整備からですね。その辺りはキメナさんにお願いできますか?」

「承知した。が、もともとそちら方面はエガンの得意分野なのだ。街道整備についてはエガンに任せようと思うが良いだろうか?」

「はい、わかりました。では街道整備についてはエガンさんにお任せするとして、キメナさんは騎士団の再訓練と治安維持部隊の設立をお願いします。それからロイさん」


「おう! なんだ?」

「ロイさんは川が近くにある村への沈殿槽の設置と農法の普及をお願いしたいんですが」

「任せときな! まずは沈殿槽が優先でいいんだな?」

「はい、飲み水の確保を優先してください。できれば塩の流通もお願いします」

「わかった!」


「それからアリアさんとシャーリーには各村への教育をお願いしたいんです」

「教育ですか?」

「きょーいく?」


「うん、今はまだ読み書き計算くらいしか教えることはできないんだけど、これからはこの地方の特産品を作って売り出せるように、例えば綿の栽培方法とか、鍛冶や木工細工なんかを教えられるようにしていけたらなって思うんだよ」


「なにから始めればいいんでしょうか?」


「アリアはまずは子供たちを集めて、文字や数字を教えるところからかな? それができたらこの村の子供たちと一緒に畑を耕したりして遊んであげて欲しい。シャーリーは子どもたちと一緒に身体を動かして遊ぶのがお仕事かな」


「一緒に遊ぶ! やる!」


「じゃあ、決まりだね。まずは文字の書き方、計算、運動。街道の整備が進んだら行き来も楽になると思うから、それまでは出来る範囲で回ってもらう方がいいかな」


「はい、承知しました。頑張ります!」


「まかせろ、あるじ!」


「じゃあ、とりあえずはこんなところですね。何かあったらその都度相談してもらう感じでよろしくお願いします。それじゃあ、今日は解散で。みんな、よろしくね」


「あの、タイチさん」

「なんでしょう?」


「タイチさんはどうされるのですか?」


「ああ、僕は少し気になる事があるからそれを調べようかと思ってます」

「気になる事?」

「はい、まあ詳細は解決したらみんなに話しますよ」


 こうして、村長会議は無事に終わった。

 翌日、村長たちはそれぞれの村に帰って行った。

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