第79話 村長会議

「しかし領主様に黙って村が集まって集合体を作るというのも反乱ととられかねんぞ」


「ではどうするんだ?!」


「タイチ君! なにかいい案はないのかい?」


「あー、えーっと、まあ一応。ただ、この方法でいいのかは皆さんで決めてくださいね」


そう言って、速読で読み込んだ知識を伝える。

まずは村長会議と並行して村民の代表による議会の新設。これは村長だけの意見ではなく村民の代表からの意見を取り入れる手法、いわゆる二院制とすること。


 お互いの村の行き来を多くするためのインフラ整備。これを最優先で行うこととし、水害で働く場所のなくなった人たちへの就労の場とし、捕まえた山賊たちの懲役の場とすること。

 そしてナーバル村の食料を配布と今後、各村の特産品等の交易を他の町などと行う計画を立て、村から外へのルートの確保を行っていく。


 そして、仲裁や調停のシステム作りを行う事。いままでは村の中だけで起こっていた問題は村長仲裁や調停を行っていたが範囲が広がるため、共通のシステムを策定し当たるようにすること。


を伝えた。


「タイチ君」

「はい?」


「これを一気にやってしまうのかい?」


「ええ、やらないと元に戻ってしまいますね」

村長たちは顔を見合わせ、一様に頷くと。


「今決定したよ、タイチ君」

「え? なにがです?」


「このナーバル地方の首長にタイチ君を推薦する」


「は?!」


「よろしく頼むよ、タイチ君!」

「いやいや、そんなことを言われてもですね」

「そして先ほどのタイチ君の提案、二院制? あれは我々には難しいと思う。これまで領主様のいう事しか聞いて来なかったのに急にお前たちで決めろと言われてもね。難しいと思うんだよ。なのでね、しばらくは我々村長は村長会議と、仲裁調停の仕組み作りをやっていこうと思う。そしてその間に、ナーバル地方を良くしていこうと考える若い人たちに院を任せる方向でいきたいと思うよ。もちろん、村長の中から院をやりたい人は出てもらって構わない、という事でだがね」

と片目を瞑って見せた。


「いや、でも、あの、僕こそそんなことをやった経験はありませんよ?!」


「タイチ君、ここにいる村長全員、君に助けられたんだよ。村それぞれの問題を解決して今までお互いにあまり行き来のなかった村を繋ぎ、この地方を平定したのはタイチ君だよ」


「タイチさん」

「あ、はい、アリアさん?」

「タイチさんは私たちを救ってくれました。初めて出会った時のことを憶えていらっしゃいますか?」


「もちろんです。どこの天使かと思いましたもん」

「うふふ。ありがとうございます。あの時、私はだれにも頼れなくてどうすることもできなくて。それを救ってくれたのはタイチさんです」


「そうだぞタイチ、俺は農業と狩りしかできなかった。水害で全部やられちまってよ、どうにもならねえ怒りや苛立ちをぶつける先もなくてよ。そこにジャバ米よ。新しい米の農法、もうすぐできるぞ、ジャバ米がな。俺は楽しみで仕方ねえ」

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