第76話 アンティーク・ノートにて

「ルーク。本当にありがとう。まだ、角は生えてこないんだね?」


「タイチ様。そう簡単には」

「あ、まあそうか。でもこれでダブ村の人たちも救えたし、本当に良かったよ」


「そうですな。タイチ様」

「はい」


「これでこの地域、ナーバル村周辺を平定できましたな」

「平定? っていうのかな?」


「その地域を安らかにした、という意味でございますので」

「ああ、そうなんだ、うん。ありがとう。ルークのおかげだよ」


「いえ、私など何もしておりません。すべてタイチ様のお力でございます。さて、憶えておいででしょうか?」


「ん? ああ、そうだね、ダブ村の件が落ち着いたらってやつね、うん、憶えてるよ」


「はい、以前お話をさせていただいたニニラカン大陸のお話でございます」

「うん。以前はレベルが足りなくてこの近隣の地図しか見えなかったね」


「はい、現在タイチ様のレベルが上がり、大陸の約半分ほどの情報が開示できる状況になりました。そのお知らせでございます」


「そっか。でもまあこの地域を平定するだけでもかなり大変だったよね?」

「そうですな。まずはナーバル地域の平定がなされましたのでこの先を見据えたお話をさせていただきたく思います」


「この先? って僕になにか役割があるってこと?」

「いえ、タイチ様が元の世界に戻るために必要なレベルアップについてでございます」


「あー! そうだった。僕は異世界から来てて帰りたいんだった。なんだかいろいろありすぎて忘れそうになってたよ」


「では、必要ありませんか?」

「うーん、最終的には帰りたいと思ってるからなあ。必要ではあると思うんだけど」


「左様ですか。ではまたタイチ様が必要な時に」

「いや、聞いておくよ。せっかくその道筋がわかってるのに全然違うルートでやみくもに進むのは効率的じゃないよね?」


「まあそうとも言えますが、タイチ様の好きにされてもそれは問題はないかと思いますが」


「悩むところだなあ。じゃあさあ、とりあえずここから直近の展開だけ考えたいかな、って思うんだけど」


「わかりました。では直近のナーバル周辺の状況をお話しいたしますね」

「うん、ありがとうルーク」


「今回タイチ様が平定された、ナーバル・テインセ・カシャム・イナム・ダブの五つの村は今後一つの共同体として動いていくことになるでしょう」


「ああ、まあそうだよね。そこで何か問題が起こるってこと?」


「はい、これまで別々の村で生活をしてきた者たちが連携していくことになりますので当然問題が起こります。大きく三つ、ひとつは文化の違いから起こる問題、そして利益や権力のバランス、最後に行政や組織の調整、でございます」


「ものすごく難しそうなんだけど」

「はい、もちろんこの地域、仮にナーバル地方といたしましょう。ナーバル地方は現在、聖王国が支配しておりますのでこの地域も聖王国の支配地域となります」


「うん、そうだったね」

「ですのでこの地域を治める聖王国貴族が存在します」


「なんとなくわかってきた気がする。本来僕がやった平定はその貴族がやるべき仕事なんだよね?」

 ルークはうなずいて続けた。

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