第72話 続アンティーク・ノートにて

「ですので私の角を使用していただければ問題ございません」

「いやいやいやいや。えっと理解が追いつかないんだけど?」


「はい、私もまさかこのような姿でタイチ様と出会うことになるとは思いもしませんでした。あの時、ナーバル村を襲う気で近づいていったところ、上空からいきなりタイチ様が降って来られそのまま」


「あー、それはなんて言うかその、ごめんなさい」


「いえ、私はこれで良かったのだと思っております。さすがに気がついたときは驚きましたが、状況を整理していくと私もまた神に選ばれたのではないかと考えるようになりました」


「そっか。あの時の魔獣か、あ、だから頭に角なの?」

「左様でございます。私は生まれて五百回ほど夏と冬を過ごしてきましたがまさかこのような事になろうとは夢にも思いませんでした」


「そうだよねえ。で、ほんとにもらっていいの?」

「構いません。この姿になってから角を落としたことはございませんのでまた生えてくるのかどうかも分かりませんが」


「ありがとう、ルーク。ほんとうにありがとう」


「かまいませんとも。タイチ様のお役に立つことが私の役目でございますゆえ」

 僕はルークに何度もお礼を言ってから角を手に取った。

 そしてそれを自分の胸へと持っていく。


「さあ、タイチ様。ここからは時間との勝負でございます。ダブ村を救うことがこの地域を救うことになります。お急ぎくださいませ」

「うん。本当にありがとう、ルーク」


「タイチ様。ダブ村の問題が落ち着きましたらぜひお話をしたいことがございます。また、その時に」


「わかった。じゃあいってくるね!」

「行ってらっしゃいませ」


 こうして拠点に戻った僕は、キメナさんたち騎士団にエーテル水晶の場所を鉱脈地図で示し向かってもらい、僕たちはシルバーリーフの探索に向かうことを決めた。


 イビルディアの角は確保できたし、残るはティグリスの涙なんだけど。

 こっそりとアリアさんに相談してみる。


「えーっとね、ティグリスはシャーリーのことなんだけど、どうやって泣いてもらうかなんぢょねえ」


「はい、泣けと言っても泣かないでしょうね」


「そうなんだよ、何かいい方法があるかな?」


「大丈夫です。任せていただけますか?」


「うん、そうしてもらえるとありがたいんだけど、できるだけ痛い思いとかは無しの方向で」


「うふふ、もちろんですよ。私がそんなことをするはずがないじゃないですか。どの程度の量が必要なんでしょう?」


「この小瓶一本分くらいでいいみたいなんだけど」


「それならすぐに用意できますよ」


「よかった。じゃあお願いできるかな?」


「はい、承知いたしました。では他の素材が集まったら準備しますね」


「うん、ありがとう。で、シルバーリーフなんだけど」


「はい、元々はこの辺りでは珍しいと言っても一日歩けば見つけられる葉っぱだったんですが、水害後は見かけたことはありません」


「ロイさんにきいてみようか?」


「そうですね、薬草や村の周りのことも詳しいでしょうし」

 ということで、ロイさんに尋ねるとシルバーリーフのもともとの群生地がこの近くにあるという。

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