第71話 アンティーク・ノートにて

「総合剣術Ⅰのおかげでなんとかなったよ、ルーク」


「それはよろしゅうございました。さて、タイチ様」


「うん、スキルレベルね。上がってるといいけど」


「おそらく上がっているとは思いますが、念のため確認されてみてはいかがでしょうか?」

「そうだね。えーと、ステータスって、あれ?」


「どうかなさいましたか?」


「なんか新しいスキルが増えてるんだけど。えっと【古代文献解読】と【生物学】だって」


「さすがはタイチ様。目的のスキルを手に入れたようです。これでダブ村の疫病対策が行えます」


「ほんと?! よかった! じゃあさっそくお願い!」


「はい、承知いたしました。少々お待ちくださいませ」


 しばらくしてルークが持ってきてくれた本は少し古く、表紙が擦り切れていたが、そこには『アルカナ・ハーブロジー:秘術と治癒の知識』と書かれていた。


「これは?」


「はい、『アルカナ・ハーブロジー:秘術と治癒の知識』は、この世界における植物や素材、魔法を組み合わせた医療の手法や知識を紹介する書でございます。現在、ダブ村で起こっている疫病、「フェイデッドモート」に有効な対策が書かれております」


「うん、ありがとう。じゃあさっそく読んでみるね」

 速読スキルを使い、『アルカナ・ハーブロジー:秘術と治癒の知識』を読み込んでいく。


「うーん、これはちょっと大変そうだね」

「はい。すでにダブ村全体に広がっておりこれを放置するとこの地域全体にこの病が広がってしまいます。早急に対応が必要かと」


「うん。だけど必要なものが揃うのかな?」


「どのような物が必要でございましょう?」


「えっと、シルバーリーフとエーテル水晶、それからイビルディアの角とティグリスの涙だって。この本にはこれを集めるのはとても難しいってかいてあるよ」


「それはまた」


「ん? どうしたの?」

「い、いえ、なんでもございません。まず、シルバーリーフは水害がなければイナム村の西に群生地がございました。エーテル水晶につきましては鉱脈地図で探せそうです。問題は」


「うん。ねえティグリスってシャーリーのことだよね?」

「は、はい。さようですな」


「うーん、泣いてくれって言って大丈夫かなあ?」

「あ、そうだ。これはアリアに頼めばなんとかなりそうだね」


「問題は、イビルディアの角か」

「タイチ様」


「ん? どうだろうね? イビルディアなんて見たこともないしなあ」

「タイチ様」


「はい? どうしたの? ルーク」


「実はタイチ様に申し上げなければならないことがございます」

「ん? どうしたの? 改まって」


「はい、タイチ様。私はタイチ様がこちらの世界に来られた時に倒された魔獣、イビルディアでございます」


「ああ、そうなんだ、それでさ、そのイビルディアなんだけどね。ん? は? えええええええ? なんて?!」

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