第70話 イナム村
キメナさんたちと別れ、僕たちが向かったのは、西の外れにある小さな農村だった。
村の入り口では、村長だという老人が出迎えてくれた。
年齢は70歳くらいだろうか、これまで山賊のせいで他の村との交易も断たれどうすることもできなかったと歓待してくれた。
その日は村の集会所で泊めてもらうことになり、夕食を頂くことになった。
「ほんとうにありがとうございました。山賊を、山賊を退治してくださるとは! 本当に助かりました。これも女神さまのお導きでしょう」
そう言って涙を流す村長。
「お爺ちゃん、泣かないで。タイチさんが困っているわよ」
隣に座っている少女が、ハンカチを差し出しながら優しく声を掛ける。
この子が村長の孫娘、名前はミミという
「うむ、そうじゃな。こんなことではいけませんな」
「いいんですよ。それよりも、この村は大丈夫ですか? これから大変になるんじゃないでしょうか?」
「はい。実はこの村に蓄えはほとんどありません。このままでは近いうちに飢え死にしてしまいますじゃ」
「そうですか。ではアリアさん、お願いできますか?」
「はい、タイチさん。村長、私はナーバル村、村長の娘、アリアネル・ハイセリアです、覚えていらっしゃいますか?」
「おお、おお! ナーバルの! 大きくなられましたなあ。もちろん覚えておりますとも!」
「良かった。それで、ご相談なんですが、村長、できればナーバル村に来ていただきたいと考えているのです」
「なんですと? ナーバル村に? いやしかし、ナーバル村も昨年の水害でひどいことに」
「ええ。ですが、その問題が解決したのです。こちらのタイチさんのおかげで」
「なんですと?! それはどういう?」
「こちらのタイチさんは渡り人なのです」
「わ、渡り人様?!」
「はい、すでにナーバル村、カシャム村を救い、今回山賊を退治され、ここイナム村も救われました」
「いやしかし、渡り人様が本当に?」
「あるじを嘘つきというか?! あるじ、こいつはこらしめてもいいのか?」
「だめ。なに言ってんのシャーリー」
「あ」
アリアの目がシャーリーに向いたとたん、シャーリーは後ろに下がり小さくなる。
「コホン。さて、村長。実際にナーバル村に来てみていただくのが一番わかりやすいと思いますので、ぜひ早急に村で数人を選抜していただいてナーバル村にお越しいただければと思います」
「うむ、承知しました。アリア殿が嘘をつくような方ではないことは承知しておりますが、急にここを捨ててナーバルに行くわけにもいきますまい。まずは先遣隊を派遣しましょう」
「はい、ありがとうございます、村長」
これでナーバル村周辺の地域は安定するだろう。
さて、いよいよ疫病が流行っているというダブの村だけど、僕のスキルレベルが上がっていればいいんだけど。
今夜、アンティーク・ノートで確認しないとね。
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