第55話 キメナ・ヒレンブラント
「ぐっ!」
重い一撃に手が痺れる。
なんて力だよ。
もう一度振り下ろされる剣をかろうじてかわすがバランスが崩れたところへ横薙ぎの一撃が来る。
避けられない! キンッ!! 剣同士がぶつかり合い火花が散った。
そのまま鍔迫り合いになるが、ギシギシと音をたてながらギリギリと押し込まれていく。
このままじゃまずい。
なんとかしないと。
そう思ったとき、ふいに赤鎧団長さんの剣が止まる。
「え?」
なんだ?
どうしたんだ?
「あんたやるねえ。さすがにエガンの腕じゃあ敵わないだろうねえ」
そう言ってニヤリと笑い剣を納める。
「えっと、どういう?」
「すまないね。あたしはキメナ・ヒレンブラント、山賊だ。あんた名前は?」
「あ、はい。タイチです」
「タイチか。タイチはどこの国の人間だい? 見たところ冒険者ってわけでもなさそうだけど」
「えーっと、ちょっと説明するのが難しいんですけど、渡り人だそうです」
「渡り人だって?! ふんっ! そうかい、そりゃあまた」
その後、何か考えているようだったキメナさんはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「で、タイチ。あんた、エガンたちを餌に私に何をさせようってんだい?」
「さすが元騎士団長さんですね。話が早くて助かります。僕たちは今この付近の村を回って困っている状況を何とか改善させようとしています」
「なんだって?! この辺りの村の向上の改善?! っは! そんなことができるんなら聖王国がとっくに何とかしてるだろうさ! 渡り人だって言ったな、タイチ。お前に何ができるって言うんだい?!」
「キメナ様、少々よろしいですか?」
アリアさんが前に出る。
「ああ? なんだいあんたは?」
「私はナーバル村、村長の娘、アリアネル・ハイセリアと申します」
アリアさんは自己紹介をして、今までの経緯を話し始めた。
話を聞き終わった後、キメナさんは ため息をつく。
そしてこちらを向き直り頭を下げてきた。
「そうか最近のナーバル村の発展はタイチのおかげなのか。すまなかった。私の認識が間違っていたようだ。本当に申し訳ない」
そう言って赤い兜を外し、素顔を表す。
彼女はとても整った顔立ちで、きれいな金髪で、年齢は二十代後半くらいだろうか。
キリッとした表情の中に優しさを感じさせる目をしているとても美しい人だった。
「なにをじろじろ見ている?」
「いえ、すいません!」
思わず謝ってしまった。
「ところでタイチ殿、相談なのだが」
「はい、もちろんエガンさんたちは開放するつもりですよ」
「そ、そうか、それは感謝する」
「ただ、こちらにもお願いがあるんです」
「お願い? なんだ?」
「はい、この辺りの山賊を一掃する作戦に参加していただきたいんです」
「一掃だと?! できるのか、そんなことが?」
「はい、協力いただければ。あ、あと合わせて水害の被害にあった村の人たちも救いたいんです。そちらもぜひ協力してください」
「う、うん。それはこちらからもお願いしたい問題だが。本当に可能なのか? そんなことが」
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