第54話 フルメタル赤キメナ
「すまない。騎士たる者が人前で泣き崩れるなど」
「いえ。団長さんがどんな方なのかよくわかりました。まあ名前はまだ教えてもらってないですけど」
エガンさんは顔を赤くして
「すまない。我ら聖王国第六騎士団長の名はキメナ・ヒレンブラント。すまんタイチ殿、我々はキメナ様には告げずにあの場にいたのだ。団長は山賊からの略奪も許さないだろうからな。そしておそらく我々がいなくなってここに捕縛されたことを知ると」
ヒューン!!
おわ!!
なんだ?
「遅かったか」
「エガンさん!」
「団長だ」
「え?」
「我々を奪還するために自ら来られたのだろう、そういうお方だ」
「いやいや、なに落ち着いていってるんですか! 止めてくださいよ!」
「あー、重ねてすまん。おそらく我らに対する怒りと、タイチ殿たちに対する怒りで我を忘れておられるのではないかと」
「は? なに言ってんですか。どうにかしてくださいよ!」
「我らが束になっても団長にはかなわんよ、タイチ殿」
「いやだからなんでそんな落ち着いていられるんですか!」
「団長に殺されるなら本望だ」
「バカ言わないでください! シャーリー! アリアさんを守って! ロイさん、ロイさんはとりあえずエガンさんたちと行動を共にしてください! エガンさんたちの拘束を急いで解いて!」
「「「はい!」」」
次の瞬間、赤い鎧の騎士がすごいスピードでタイチに向かってくるのが見える。
「ひぃ!!」
俺は思わず情けない声を出してしまう。
マジかよ……
こんなところで死にたくないぞ!
僕の願いはむなしく、目の前まできたその赤い騎士は剣を振りかぶる。
ヒュッ ドガッ!!!
やばい、死ぬかも。
呪文呪文!!
「ファイヤーボール!」
ゴォウゥ!!
やった!
当たった!!
「くっそ、効かないのかよ!」
俺は魔法を放つがまったくダメージを与えられていないようだ。
だが、その攻撃のおかげで一瞬隙ができたようで、その赤い騎士は距離をとった。
そしてその騎士は再びこちらに突進してくる。
ヒュッ ガツッ!!!
今度はなんとか剣をかわしたが、勢い余って壁に激突した。
痛い!!
身体中が痛い。
って言ってる場合じゃない、呪文だ!
「時の神、我が意を汲み時の歩みを遅らせたまえ。スロータイム!」
この魔法は周囲の時間の経過を遅らせる呪文、基礎魔法Ⅰの中でも最難関の魔法!
いやあ読んで練習しててよかった。
しかし遅らせてこのスピードか。すごいな、団長さん。
全身赤鎧の団長さんは剣を突き立て一気に距離を詰めてくる。
僕はロイさんに借りているロングソードを構える。
もちろん各種強化済み。
突進してくる赤鎧団長さんの剣をなんとか防ぎきる。
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