第52話 山賊さんいらっしゃーい
「タイチ。おい、タイチ! おい!!」
「なんですか、ロイさん」
「なんですか? じゃねえよ、どうすんだよこれ」
シャーリーが回り込んで捕縛する作戦は見事にはまった。
その後も続々と山賊が罠にかかり計十八人の山賊さんが捕縛されている。
「そうですねえ、さすがにこれ以上は厳しいでしょうねえ。アリアさん、どうしましょう?」
「そうですねえ。村に着くのは明日の朝でしょうからどうしてもこの辺りで野宿という事になりますし。山賊の方々は縛られたまま野宿、という事になるのでしょうけれど、魔獣も出るかもしれませんし、困りましたね」
「そうだねえ、このままだと魔獣に襲われてしまうかもだね、まあ仕方ないですよ、山賊なんだし」
「おい! タイチ! お前せっかく生け捕りにしたのになんで」
「ロイさん、仕方ないじゃないですか、魔獣が襲って来たら僕たちだけで逃げるしかないんですから」
「いや、しかしなあ」
「あるじ! わたしがたたかう」
「シャーリー」
「なんでもありません!」
そんなやりとりを見て生け捕りにされた山賊たちがさるぐつわ越しにざわつき始めるのが分かる。
「あー、そうですよねえ、皆さんも不安ですよねえ。でも仕方ないですよね、山賊なんですもん。え? なんでそんな不安そうな顔をしてみるんです? どっちにしてもこれまで犯した罪を裁かれるんですから、ここで魔獣に食い殺された方がいいかもしれませんね」
「タイチ、お前ひどいな。さすがにおじさんドン引きだよ」
「ロイさんは黙っててください」
「へいへい。知らねえよ、好きにしな」
ロイさんはタイチを睨みつけ、その後離れていく。
「では山賊の皆さんに少しだけ話し合いの機会を設けようと思います。全員を安全な場所に避難させるわけにはいきませんので」
タイチの一言で山賊たちの目の色が変わる。
「では、それぞれの山賊集団の代表を一人決めてください。あ、拘束は続けさせていただきますのでまずはそれぞれ所属している集団に別れていただけますか?」
結局山賊たちは三つのグループに分かれていった。
「三つの集団になりましたか。では一人ずつ代表者を決めてください」
と伝えるとそれぞれから一人ずつの代表が前に出る。
「シャーリー、じゃあその人たちのさるぐつわを外してくれる? あ、外した時に騒ぎ出したらその集団はここに残る、で決定ですから」
「はい、あるじ!」
「では、三名のかた、所属とお名前を教えていただけますか?」
「ゴンバ団のルイガン。てめえ、こんなことしてただで済むと思って」
ゴン!!
「あるじ、こいつはうるさい。殴ってよかったか?」
「ありがとうシャーリー。皆さん、気をつけてくださいね。こうなりますよ? では、次のかた」
「俺はジャブガ団のトッキンだ。捕まっちまったら終わりだ。ここに投げていけ」
「ふむ。まあ考えます。では最後のかた」
「私は、私はどこにも属していない。この者たちもだ、私の処罰は構わない。どうかこの者たちには寛大な処置をお願いする」
「はい、ありがとうございます。なんてわかりやすいんでしょう。すみません、あなた、お名前を教えていただけますか?」
「私は、エガンという。どうか」
「ああ、はい、大丈夫です。当たってよかったですよお、はずれてたらもう一日これやらなきゃでしたから。ではエガンさん。あなたの主の所に案内してもらえます?」
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