第49話 教育的指導

 ―――翌日


「わたしはタイチ様の従者です。あるじ、なにかご用はあるか?」

「シャーリー?」

 アリアさんがシャーリーを振り返り見る。


「ひっ!! 失礼しました。私はタイチ様の従者でございます。あるじ、なにがご用はございますか?」

 アリアさんが静かに頷く。


「あ、いえ、今は特に。シャーリー、どうしちゃったの?」

「タイチさん」

「はい?」


「大丈夫ですよ、きちんと従者としての教育を行っただけですから」

 アリアさん、顔は笑ってるけど目が! 目が笑ってないから。


「あ、はい。そうですよね。なんでもないです」


 シャーリー、そんな目で見るんじゃない!

 助けを求められても助けられるわけがないじゃないか!!

 すまん! シャーリー!


「あ、シャーリー。少し大事な話があるから村の外の見回りをお願いできるかな?」


「りょーかい!!」

「はやっ!」


「タイチさん」

「はい!」

「あまりシャーリーを甘やかさないでくださいね」

「は、はい!!」

 アリアさん、目が怖ええよ!!


 昨日いったい何があったのかは怖くて聞けないが、これでシャーリーがまとわりついてくることはなさそうだ。少し残念な気もするけど、と思っていたらアリアさんの視線が刺さる。


「タイチさん。今後は気をつけてくださいね。いくら渡り人とはいえむやみに従属させるのはいかがなものかと思います」


「あ、はい! きをつけます!」

 精いっぱいの返事です。



「ところでアリアさん。ダガン村長との話し合いはどうなったんですか?」


「はい、タイチさんたちがティグリス討伐に出かけた後、話し合いを持ちました。ダガン村長はナーバル村との協力関係を認めてくれましたよ」


「そうですか、良かった」


「ええ、まあティグリスを討伐できたらという話だったのですがタイチさんがあっさり解決しましたから。カシャム村の人たちも喜んで協力してくれると思いますよ」


「そうですか。では細かいところはカシャム村から使者を出してもらって話し合ってもらえばいいですね」

「はい、そのように手配しています。タイチさん、さっそく次の村に向かいますか?」


「うん、できるだけ早く回りたいよね。次はどこだっけ?」


「はい、次は南のイナム村です。山賊に襲われているというお話でしたね」

「あー、そっか。じゃあアリアとロイさん、シャーリーはダガン村長にイナム村までのルートと山賊の出現場所をだいたいでいいので確認しておいてくれる? 僕は『アンティーク・ノート』で山賊対策に関する本を確認してくる」


「はい、いってらっしゃいませ」

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