第48話 殺し屋の目
一人の足取りを除きとても重い足取りでカシャムの村にたどり着き、村長宅では村長、アリアさん、村の代表数名が待ち構えていた。
今回のティグリス討伐戦の説明を行う。
ダメです。
アリアさんの後ろに鬼が見えます。
それでも説明の間、アリアさんは静かに殺し屋の目で僕にまとわりついているシャーリーを、いえ、僕を睨みつけています。
「おお、そうですか! よかった! ではもうティグリスに襲われる心配はないという事ですな!!」
「はい、残念ながらティグリスの素材は持ち帰れませんでしたが、間違いなく討伐し、仔モーホーンも無事に連れ帰りましたので」
「ありがとうございます! 本当にありがとうございます!! ただ、その獣人の娘さんは?」
ギロッ!!
アリアさんの目が、目が怖い。
「あ、えっと、ティグリスに襲われていた所を助けまして。彼女はシャーリー、私が責任を持ってナーバル村に連れ帰りますので、ご心配なく」
「ああ、いえ。この辺りに虎の獣人なぞ見たことがありませんのでな。いらぬ心配でしたな」
「あはははは、はい、どうも、ええ。大丈夫です」
「それでは、村の今後のこともありますので、あとはまた明日にでも。今日はお疲れでしょうからな、ゆっくりお休みください」
あ、待って。まだ話しててもええんやで。なんだったらいまから村のこととか。ああああああ。行っちゃった。
「タイチさん」
「ひゃい?!!!」
「ご説明いただけるのですよね?」
「もももももちろんです! ね、ロイさん。あれ? ロイさん?! いねえし!」
「ロイさんなら村長と一緒に出て行きましたよ」
「あ、あー。そうなんですね」
「で?」
「あ、はい、この子はシャーリーと言いまして」
「正直に言ってくださいね」
「は、はい! もちろんです!」
「あるじ~、こいつはだれだ? 食ってもいいのか?」
「こら! シャーリー! ダメだって言ったろ? 人は食わない!」
「ちぇ~。こいつはうまそうなのになあ」
「タイチさん」
「あ、はい、すみません。ごめんなさい! この子、ティグリスです」
「ええ、そうなんでしょうね」
「え? 驚かないんですか?」
「驚いてますよ」
「あ、そうですか? いや、そうは」
「は?! それよりも今はなぜか怒りが勝っていて。ダメでしょうか?」
「いや、ダメってことはないんですけど、お酒を使って退治しようとして、酔っ払ってるところをテイムできるかなぁとやってみたらできちゃいましてこうなりました、すみません!」
「なぜ謝るんです? タイチさんが力を使い、テイムして獣人化させたのです。シャーリーさん、あなたはタイチさんに従属しているのですね?」
「ああ、そうだ。あるじは強いし賢い。私はあるじに仕えるぞ」
「わかりました。では、私とともに来てください。タイチさんの従魔としてふさわしい立ち振る舞いを覚えなければなりません」
「あ、あるじ? こいつは?」
「あのね、シャーリー。これは避けては通れない道だと思うんだ」
「しかしわたしはこれでもカシャムの森の覇者なのだが、ひっ!?」
アリアさんの殺し屋の目がシャーリーをひと睨みする。
「世の中にはね、逆らってはいけないことがあるんだよ。がんばってくれ、シャーリー」
僕は二人を静かに見送った。
アリアさんの殺し屋の目って特殊スキルなんじゃないだろうか?
絶対に聞けないけれど、なぜかそう思った。
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