第45話 基礎魔法Iのテイム

「アニマリス・ドミナス!」


 僕の手から放たれた光の玉はゆっくりと飛んでいき酒樽の上に落ちる。

 すると酒樽の中から一筋の光が天高く伸びて光はそのまま僕の身体に繋がり消えていく。


 ふぅ、成功だ!

 これでティグリスはテイムされたはずだ。


 さきほど使った魔法はいわゆるテイム魔法。

 基礎魔法Ⅰに載っていたものだ。これだけ酔っぱらってぐでんぐでんになってる魔獣ならテイムできるんじゃないかと思ってやってみたら成功した。


「な、なあタイチ」

「はい、なんでしょう?」

「これってさあ」

「はい」

「お前、テイムしたよな?」

「ええ、そうっすね」

「そうっすねってお前」

「はい」

「なんでもありだな」

 ロイさんはなぜか遠くを見つめている。


「いやあ、基礎魔法ってすごいですね。まさか本当にテイムできるとは思わなかったです」

「できねえよ」

「え?」


「できねえの! 普通は!! ティグリスをテイムできるのはテイムスキル持ちでめちゃくちゃレベルを上げたやつか魔法の達人だよ! 基礎魔法のレベルなわけねえじゃねえか。ああ、あれか村長が言ってたやつだ」


「え? なんです?」


「タイチだから仕方ない」


「ひど」


「お前の方がよっぽどひどいよ。本当に気を付けなきゃならんな。お前が誰かに利用されないように」


「ああ、はい。ありがとうございます」


「まあいいや、で、どうすんだ? こいつを村に連れ帰ったら絶対に殺されるぞ」

「ああ、そうですよねえ、どうしましょう?」


「俺が聞いてるんだがな」

「ええ、まあ。でもさすがにテイムした後に殺されるのを見てるわけにはいかないですしねえ。まあ、とりあえずティグリスを起こしましょうか?」


 ガオオオォォン!


 ティグリスが目を覚まし大きな声で吠えた。


「ほれ、やっぱりこうなったじゃねえか。逃げんぞ!」

「大丈夫ですよ。見ててください」

 僕がそういうとティグリスは立ち上がりこちらをじっと見つめてきた。


 ガウウゥ


「あ、なんだ? なんか喋ってないか?」

「そうですね。なにを言いたいのかまだ繋がったばかりでよくわからないですけど。ちょっと待ってもらえます?」


「わかんのか?」

「もう少し意思疎通には時間がかかりそうですけど」


「ん? けど?」

「もっと飲ませろという意志を感じます」

「はぁ? 呑んだくれて倒れてテイムされちまったのにか? お前、すげえやつだなあ、なんだか仲良くなれそうだ」

 ロイさんは大笑いしている。


 ガウウウウウ!


「あ、ロイさん。こいつを喰ってもいいかって言ってますよ」

「だめだよ、いいわけないだろ。ダメって言ってくれよ」


「ですよね? で、ティグリスがこうなったらテイムされてやるから名前を付けろって言ってる気がします」

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