第28話 しおおおい
「はい! やってみます!」
アリアさんが坑道掘りの作業を始め土を掘り進め、坑道を作りながら進んでいく。
最初は少し不安そうな表情を浮かべていた村長さんとロイさんも、次第に作業に慣れてきてアリアさんが掘って僕が固めた道の補強や天井が崩れるのを防ぐため、支保工事(シャフトや支柱)を行う。
とりあえずそんなに深く掘る必要もなさそうだったので簡易でね。
数時間が経ち、ようやく坑道が完成し、その奥には予想以上の景色が広がっていた。そこには豊富な塩の鉱脈があり、まるで塩の宝庫のようだった。
「おいタイチ! まじかよ! こいつはすげえぞ!! これでみんな生きていけるぞ!」
「それどころではないぞ、ロイ! これだけの量の塩が産出されるとなればこれを元手に村を豊かにできるぞ! タイチ君、ありがとう。本当にありがとう!!」
「うれしいです! でも、まだ作業は終わっていません。塩を採取する前に、安全対策をしっかりと行わなければなりません。坑道の支持体を強化し、通気や照明の整備、安全な採掘方法などを考える必要があります。って書いてあります」
「そうだな。村からここまでの道ももっと安全なものにしないとな。途中で魔物に襲われたりしたら大変だ。この塩坑の出入口をしっかりと固めておかなければこの中に魔物が入り込んだらそれこそ一大事だ。よし、ここから先は村の土魔法と木魔法が使える者たちで相談してみよう、本当にありがとう、タイチ君!」
「じゃあとりあえず今日の所は土魔法で入口を塞いでおきましょう」
「頼む!」
こうして村に戻り、村長とロイさんの二人はすぐに村人を集め話し合いを始めた。そして、今後の予定について話し合っていた。
まずは、坑道の安全確保と整備。次に塩の採取方法と運搬ルートの確保、最後に塩の販売先の開拓と販路の拡大についてだけど、販売先や販路については冬が過ぎ、春にならなければ商隊も冒険者もやって来ないとのことだったので春までは採取に専念できるそうだ。
「アリアさん、今日はお疲れ様でした」
「いえ、こちらこそ。タイチさんのおかげです。それにしてもあの地図は凄かったですね。あんな細かい情報まで載っているなんて」
「まあ、そうですけど」
「あら? あまりうれしくないのですか?」
「いや、そりゃみんなが喜んでくれるのはうれしいんですけど、なんだか僕の力じゃないのに僕がすごいことになってるみたいで落ち着かないです」
「タイチさん」
「はい」
「そんな顔をしないでください。村の皆がタイチさんに感謝しています。それがタイチさんの力なのだと」
「はあ」
「あ、でも、タイチさん。そうやって自分の力をきちんと冷静に感じているのはすごいと思います。その力があればこんな村なんて力で支配できてしまうでしょう。それを正しいことに使えることがタイチさん自身の力なんだと思います」
アリアさんの清らかな笑顔に救われたような気がした。
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