第27話 塩の道

「はい、というわけでやってきましたが、皆さんどうしたんですか?」


「いや、タイチ君。というわけでって村から近いとはいえこんな所、誰も通ったことがないんだからね」

 村長さんとロイさんは先頭で草を刈ったり道を作りながらの作業だったからけっこう大変だったみたい。


「お疲れ様です。これも塩のためですから」

「おう。これで塩が出なかったらただじゃ済ませねえ」


「ロイさん、殺し屋の目になってますよ」

「もともとこういう目つきだ、気にするな。本当にあるんだろうな、タイチ!」


「ええ、鉱脈地図にそう書いてあります」

「しかしお前、本? が読めるスキルもすごいが、もともとの世界でもそんなに知識が豊富だったのか?」


「どうなんでしょう? 勉強は嫌いじゃなかったですけど」

「俺たちとは違う世界か。でも魔法はなかったんだろ?」


「はい、僕らの世界には魔法は存在しないです。その代わりに科学が発展していました」


「かがく? なんだそりゃ?」

「科学は実験や観察に基づいて進化していきました。例えば、僕たちが使っている道具や農業の技術、医療の進歩などは、科学の成果によるものなんですけど、こちらの世界の農具とそう変わらない進化をしているというのは面白いですね」


「そりゃあ家の畑を耕すのに土魔法使うなんてタイチ君くらいしか思い浮かばないしな。普段は耕すのに人力だからな、同じような道具になっていくだろう」

「そうですね、さすが村長さん」

「そ、そお?」

「もう、お父さん! なんで照れてるの、恥ずかしいですよ」

 村長さんとアリアさんの親子の会話を聞きながら、


「あ、それからこの鉱脈地図も科学の力っぽいですけど。『アンティーク・ノート』は完全にスキルなのでこっちの世界にも科学技術は存在するんですかねえ?」


「タイチ君」

「はい」

「そんなことをこの辺境の村に住む我々に聞いて答えが見つかるとでも?」

「いや、まあちょっと気になっただけですから、気にしないでください、村長」

 村長も道作りに疲れて殺し屋の目になってる。


「この辺りですね」

「タイチ君?」

「はい?」


「ここって、何もないじゃないか!」

「おい、タイチ! どこにあるんだ? 塩!!」


「まあまあ、お二人とも落ち着いてください。塩はこの下です」


「え? 下? 下って??」


「はい、ここから土を掘り進め坑道を作っていきます!」

「はああぁっ!? 掘っていくだとおおぉぉーー!!!」


「ちょ、ちょっと待ってくれタイチ君。いくらなんでも無理があるんじゃないかね?」


「いえ、大丈夫です。このために土魔法で道を作るのを控えてたんですから。さ、アリアさん、昨日伝えたように下ではなく斜めに掘るイメージでやってみてください」


 こうして坑道作りが始まった。

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