第20話 付録付きの本

 翌朝、目が覚めた俺が外に出てみると、村の人たちはもうすでに畑に向かっているようだった。

 急いで支度を整え村の西側へ向かう。


「みなさん、おはようございます」

「タイチ君か。よかった、ちょっと見てもらいたいんだが」

 沈殿槽を見ると、昨日見た時よりも水位が下がっているような気がする。


 これ、ひょっとして。


 ポンプのスイッチを入れてみると、ドバァと水があふれてきた。


 おお!

 ちゃんと機能してくれてる!

 やっぱり、澱んでいた水を汲み上げていたから水位が下がっていたみたいだ。


 これで、水不足は解消されるんじゃないかな。

 村長に報告すると、すごく喜んでいた。


「タイチ君! これはすごいよ! このポンプという仕組みはすごすぎるぞ!」

「ああ、よかったです。これで水はなんとかなりそうですね。次は畑ですが」


「そうなんだよ、タイチ君! 畑に撒いた種からもう発芽しているんだよ! これはいったいどうなっているんだ?」

 村長が興奮気味でまくしたててくる。

 アリアさんが村長を落ち着かせてくれた。


 うん、俺もこの状況は異常だと思う。


 まずは、発芽した苗を見てみることにするとそこには、日本で見たことがある野菜がたくさんあった。ジャガイモやニンジン、トマトなんかがある。


 実はロイさんに渡した種は本に付いていた種だ。いわゆる付録付きの本ってやつ?

 付録の種をロイさんに渡しておいたんだけどまさかこんなに早く発芽するとは思わなかった。


 この分だと早く収穫ができそうだな。

 うーむ、謎だ。

 まあでも、収穫すれば食糧問題は解決するだろう。


 そして田んぼに向かう。

 田んぼはイメージしていた通りに出来上がり、ジャバの苗をどう植えるのかでロイさんたちが騒いでいるところだった。


「おお、タイチ! 良いところに来た。このジャバの苗をどうするんだ?」

「ロイさん、今まで村ではどうやって植えていたんですか?」


「そりゃ、一本づつだな、こうやって」

 そうだよねえ、そうなるよねえ。


「ロイさん、ジャバは三から五本を株単位として植えていきます。で、その前に、アリアさん」

「はい!」


「すみません土魔法でこの水が張った田んぼの土を平らに慣らしてもらえますか?」


「は、はい! やってみます」

 アリアさんは緊張した面持ちで作業を始める。


 慣れない様子だが、アリアさんは土を平らにしていく。


 アリアさんの作業が終わったところで、今度は俺が田んぼに入り株を二、三センチの深さに植えていく。


「おいタイチ、株の間隔はこんなに開けるのか?」


「ええ、この苗が大きくなっていきますからこのくらいの間隔は必要です。お願いできますか?」

「よし、わかった! おい、みんな行くぞ!!」


 こうしてロイさんたちの協力のもと、田植えも無事に終了した。

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