第18話 締まらない
まさかこんな大物が出てくるとは。
しかも、そいつの後ろからはさらに数匹のオーガがやってきた。
これはまずい。
俺は焦って周りを見渡すと、まだオークも残っている。
くそっ!
これじゃ足りない!
もっと強い魔法!
「えーっと、これならどうだ?!」
ページをめくって強そうな名前の呪文を読み込む。
「『炎の精霊よ、我が願いを聞き届け、その力を示したまえ。火炎球!』」
ゴオオッ!!
真っ赤に燃える火の玉がオーガに向かって飛んでいった。
オーガの一匹に命中した瞬間、
ボゥウウン!!!
大爆発を起こした。
「うわあああ!!」
爆風に吹き飛ばされそうになるのを必死に堪える。
「タイチ君! 大丈夫かい!?」
村長さんの声が聞こえたので振り返ると、村長さんとロイさんは無事のようだ。
「あ、ああ、大丈夫、です」
安心して、力が抜けてしまう。
「おっと」
倒れそうになったところをロイさんに抱き留められた。
「ありがとうございます。ロイさん」
「いや、それより、君はほんとに渡り人なんだな」
「どうなんでしょう?」
説明しようとしたところで、アリアさんが走ってきた。
「タイチさん!」
「あ、アリアさん! ごめんなさい! 勝手に飛び出して」
「いえ、それはいいんです。それよりもタイチさん、あれは?!」
「ああ、はい。でも、僕一人じゃ倒せなかったかもしれません。村長さんたちが槍を投げてくれましたし」
「いや、それも君が魔法で出した武器だから。凄いじゃないか!」
「そうですとも! あんな魔法、誰にも使えません!」
二人に褒められて照れていると
グォオオオオ!!
オーガの雄叫びが響いた。
「ちぃっ! あいつ、まだ生きてやがったのか!」
ロイさんが剣を構えなおす。
「タイチ君、下がっていて。私たちがなんとかする!」
村長も槍を構えて前に出る。
しかし、オーガは村長には目もくれず、こちらへ向かってきた。
そして、そのまま俺の前に立つ。
えええええええええ!!!!!
なんでこっちに来るんだよぉおおおおお!!
思わず叫んでしまうところだったが、声が出なかった。
俺が動けずにいるうちに、オーガはどんどん迫ってくる。
こわいこわい!
もうだめだ!
目をつぶってしまった時だった。
ヒュン!
ドスッ!
音がしたと思ったら、目の前に迫っていたオーガが横に倒れた。
恐る恐る目を開けると、オーガの首から上が無くなっている。
どうやら、ロイさんと村長が槍を投げてくれたらしい。
「「「「やったぁああ!」」」」
村人たちから歓声が上がった。
「やったぞ! オークどもを全滅させたぞ!」
「すごい! すごいぞ!」
「村長たちもすげぇよ! 槍を投げるなんてよ!」
みんなが喜びだ。
こうして、魔物の襲撃から村は守られた。
しかし、最後は締まらなかったなあ、カッコ悪いな。
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