第17話 魔法

「この本に書かれていることを読めば発動するの?」

「さようでございます。今回のオーク、オーガごとき、この魔法で難なく倒せますとも。私が保証いたします」


「あ、ありがとう? ルークって何者なの?」


「ふふふ。それはまた別の機会にでも。タイチ様、お急ぎになられませんと」


「ああ、そうだった! ありがとうルーク! はい、じゃあ、図書券!」


「ありがとうございます、タイチ様。ではまた二日後に」

 そう言って鹿の角を被った老執事は一礼すると、世界は白んでいき元の世界に戻っていく。


 確かに頭はグラグラするけど気絶するほどではない。


「ああ! タイチさん! よかった。急に返事がなくなって!」

「あ、ごめんなさい。アリアさん、僕、村長さんのところに行ってきますね」

「え?! でも」

「大丈夫です。オークやオーガなんて楽勝らしいです! じゃ、行ってきます!」

 村長さんたちは村の東側の柵の所で食い止めてるはずだ。


「え、ちょ、ちょっと!? タイチさん!」

 アリアさんの声を背にして、俺は村長さんたちのもとへ走った。


 ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲ ▽ ▲


「くそっ! このままだとジリ貧だぞ」

 ロイさんが剣を構えて叫ぶ。


「ま、村の子どもたちが逃げ延びてくれりゃあそれでな」

 村長も叫ぶ。


「おーい、村長さーん!!」

「タイチ君?! 何をやっているんだ! 早く逃げないか!」

「あ、なんか大丈夫っぽいです。ちょっと待っててくださいね」

 本を取り出し、呪文のページを開く。


「えっと、『大地の精霊よ、我が願いを聞き届け、その力を示したまえ。大地の槍!』」

 本に書いてあるとおりに唱えると、目の前に土でできた巨大な槍が現れた。


「な、なんだこいつぁ!?」

 村長さんが叫んだ。


「村長さん! これをオークに投げつけて下さい! あとは僕がなんとかしますから!」

「お、おう。わかった」

「ほら! オークども! 食らえぇ!」

 村長が投げた槍はオークたちの群れの中へ消えていった。


 ブモォオオオ!!


「よしっ! 当たったぞ!」

 命中した!

 これでみんな助かるぞ。続けていこう!


「次いきます! 『大地の精霊よ、我が願いを聞き届け、その力を示せ。大地の針!』」

 今度は地面に穴が開き、そこから無数の鋭い岩が突き出してきた。


 ブギャァア!


 オークたちが次々と串刺しになる。

「す、すごい」


「お、おい、村長。今の見たか? あの子、今、魔法を使ったぞ」

「ああ、私にも見えた。なんなんだ、一体」


「村長さ~ん! 次はどうしたらいいですか?」


「あ、ああ。とりあえずオークを殲滅しよう、タイチ君!」


「わかりました! 『大地の精霊よ、その力を示し、我の敵を討て』」

 俺の合図で、オークたちに突き刺さっていた尖った石が次々と爆発し


 グギャッ!

 ブギィイ!


 次々に絶命していく。


「お、おい、見ろ! オークが減っていくぞ!」

「やった! これならいける!」

「おお! やるな!」

 村人たちも歓声を上げた。


 しかし、その時だった。


 ドスン!


 大きな音を立てて、何かが迫ってきたのだ。

 そこには、先ほどまで戦っていたオークより二回りは大きなオーガがいた。

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