第16話 魔獣襲来

 翌日、それは突然やって来た。


「村長!! 大変だ! 魔獣が襲ってきた!」

 村人が血相を変えて駆け込んできたのだ。


 すぐにロイさんの指示のもと戦闘態勢に入る。

 俺たちも戦う準備をしていると、村の外から雄叫びと共に何か大きなものが飛んでくる音が聞こえてきた。


 音の方を見ると、そこにはオークがいた。

 しかも一匹ではない。次々とやってくる。

 オーガもいるようだ。


 全部で10匹はいるだろうか?

 一体どこから現れたんだ?!


「村長! どうする?! この数相手は無理だぞ」

「村長!」

「村長!?」


「無理だ。これだけの数のオークを相手に出来る戦力はこの村にはない。アリア、村の女子どもを西の川のほとりに集めろ。戦えるものは東側の柵の前に。食い止めている間にアリアが指揮して隣村に逃げ込め!」


「で、でもお父さん!」


「この数のオークはそう長く止められん。急げ!」

「わ、わかった」

 アリアさんは急いで女子どものところに向かっていった。

 アリアさんのお父さんは、村人たちを集めて指示を出している。

「タイチ君はアリアと一緒にいてくれ」

「わかりました!」


「よしっ! みんな行くぞ!」

「「おおぉ!!!」」


 こうしてはいられない。僕のスキルを使わないと!


「えっと、『図書券!』」

 前回と同じように世界が薄く白んでいき僕は『アンティーク・ノート』へ向かう。


「ようこそお越しくださいました、タイチ様」

「ああ、ルークさ、ルーク! ごめん、ちょっと急いでるんだ! 村がオークに襲われてるんだ。なんとか助けたいんだけどお願いします!」


「おや、それは大変でございます。急ぎ取り揃えますので少々お待ちくださいませ」

 そして、俺が選んだ本を手に戻ってきたルークに、俺はすぐさま聞いた。

 頼むぜ、ルーク! お前だけが頼りなんだ!! その本をパラパラとめくると、あるページで止まった。


 そこに書かれている文字を指差しながら読み上げる。

 これでいけるか?!


「『オーク大発生による襲撃への対処法』……あった!」

 その本には、今回のような大規模なオークの襲撃の場合の対策法が書かれていた。

「まずは負傷者の手当。次に食糧の確保。最後に防衛ラインの設営。これなら、俺にもできるはずだ。えっとルーク、僕ってここから戻ると倒れちゃってるみたいなんだけど」

「ああ、最初は皆さまそうおっしゃいますね。大丈夫ですよ、タイチ様は二回目でございますからもう倒れるようなことはございません。そして今回はもう一冊、こちらをご用意させていただきました」


 そういうと、また一冊の分厚い辞書のような本が渡された。

 これ、何かのマニュアル?


 俺は早速、本の中身を確認する。


「ルーク、これって?」

「はい、タイチ様がお使いになられる魔法でございます」


「魔法? 僕が?」


「左様でございます。この本のページをめくりながら魔法を唱えていただければ、きっとお役に立てるはずでございます」


「魔法」


 俺は、自分の手を見つめた。

 魔法、魔法ね。

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