第8話 問題解決のはじまり

「……チさん! タイチさん!!」


「あ、ああ。アリアさん?」


「大丈夫ですか?! いきなり倒れちゃったんですよ!」

「それで?! どういうスキルだったんだい、タイチ君」


「あ、えーっと説明しづらいです」


 僕が倒れている間にイビルディアの解体は終わり、僕はアリアのお父さんに背負われて家に運ばれたらしい。


「ゆっくりで構わないよ。本来スキルは人に話さなくても良いものだ。話したくないことは話さなくてかまわないからね」


「あ、はい。アリアさんとお父さんにはお世話になっていますし、きちんと話をさせてください」


 僕はアリアさんとお父さんの村長さんに図書券スキルのことを話した。


「そんなスキルがあるのか?!」

「タイチさん。よくわかりませんがすごいんですよね?」


「ええ。僕にもよくわかりませんが、とりあえずこの村の食糧問題と水源問題は解決できそうです」


「「ええ?!」」


 そりゃあ驚くよね。


「タイチ君。それは?」

「ええ、僕の世界への帰り方はまだ教えてもらえなかったんですが、かわりにこの村の問題を解決する方法を教えてもらえました。と言っても複数ある問題のうちの食糧と水の問題だけですけど」


「タイチ君!! それが今一番の問題なんだよ!」

「タイチさん! ありがとうございます。本当に、本当にありがとうございます!」


「あ、いや、まだ解決したわけではないので」

「で、どうすればいいんだ?! タイチ君!」


「えっと、この本を見てもらえますか?」


 僕は手に持った本を二人に見せたんだけど


「本? タイチくん。それはいったいどういう物なんだい?」


「え? これですけど」


 本を広げて見せたけど、二人には見えないらしい。

 他の人には見えないのか。


「えっとじゃあちょっと読みますね。たくさんあるので一つ目だけ要約します。まずは、近くの川や湖から水を取り、浄化する方法が紹介されています。この方法は簡単に実行できる上に、安全な飲料水を確保できるため、非常に有効です。と、書かれています」


「タイチ君。本にそう書いてあるのかい?」


「ええ、そうですね、そう書いてあります」


「そうか、それは」

 村長はうつむき言葉を濁した。


「えっと何か問題が?」

「ああ。この村の周りの川は去年の水害で泥水しか流れて来ないんだ。村の川なら魔獣も出ず安全なんだが」


「大丈夫です! 沈殿槽を作りましょう」


「ちんでんそう??」


 僕は沈殿槽がどのように機能するかを説明し、泥水から安全な水を取り出す方法として有効であることを村長に伝えた。


「本当にそれで水が飲めるようになるのかい?」

「お父さん! 渡り人の知識なのよ!」


 こうして僕たちはこの村の水問題解決のための沈殿槽作りを始めることになった。


 よし! 僕のスキル、<図書券>でこの村を立て直して、住みやすい村にしていくぞ!

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