第9話 沈殿槽を設置しよう
「まずは、泥水を汲み上げ、濾過する装置を作らないといけないね」
「お父さん! その前に沈殿させる場所が必要なんじゃないの?」
「ああ、そうだね。まずはそちらを先に準備しよう」
村長さんとアリアさんの親子と村の西側にある川の方に歩いていく。
もちろん目的は沈殿槽を作るためだ。
川の水が綺麗になるのってどんな感じなんだろう。
なんか、小学校の時に理科の実験で作ったろ過装置みたいになるのかな。
あれって確か紙とかで濾してたっけ。まあ、今は紙はないんだけど。
本には樽をいくつか用意して、前処理槽にまず水をためて重いものは先に沈殿させる。次の槽の中に砂利と砂と炭の槽を作り、前処理し終わった水を通す。これをできるだけ多く繰り返していき、さらに飲用として使うものは念のため煮沸消毒する。
この手順でなんとかなりそうだな。
そう説明すると村長さんはとりあえずやってみようと村の人たちと協力して材料をそろえてくれた。村のみんなもいろいろと協力してくれるらしい。
特に子供を中心に。
やっぱり飲み水の確保は重要だよなあ。
さて、もともとは村の西側の川に面したこの場所では自由に水が使えていたらしい。水害で水が濁りどうにもならなくなっているということだったけど、実際に見てみると確かにひどい状況だった。
「これはすごいね、ひどい」
「ああ、去年まではこんなにひどくなかったんだがね。今はこのありさまだ」
さすがにこれは飲み水には使えない。
「じゃあ沈殿槽でのろ過をやってみましょうか」
僕はそう言って本に載っていたとおりにろ過装置を作っていく。
最初は簡単なものでいいよね。
ろ過装置は樽と木枠でできたシンプルなものだったけど、まずは前処理槽からだね。
川から前処理槽に水を引き込み大きなごみや泥を沈殿させる。ここは定期的に沈殿した物を掃除しなきゃだけどそこは村の人たちが行う予定だ。
次に中サイズの桶を二つ並べてその間に板を渡す。真ん中に穴を空けて底に砂利を入れる。そして蓋をして下側に網を置く。
最後に砂利や砂、炭を層にした処理槽の上から水をかけて下に流す。これで終わり。
簡単すぎるくらい簡単。
僕は村長さんたちに説明しながら、ろ過装置を完成させると、村長さんとアリアさんは興味深げにろ過装置を観察している。
村の人たちはもう作業に取り掛かっているようだ。
さあ、いよいよ本命の水の取り出しだ。
僕たちはろ過装置の前で村長さんに向き声をかける。
「じゃあ、試してみますね」
僕はそういって本に書かれていたように本のページを見ながら両手を胸の前に構えて呪文を唱える。
『本よ! 我が願いを聞き届けよ! 我は願う。清浄なる水を』
「おお、タイチ君が光っている!」
「え?」
「タイチさん! 私にも見えます!」
え? アリアさんにも見えるの?
「タイチ君、いったいなにが起こるというんだい?」
「いや、本に書いてある通り読んだだけです」
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