第6話 図書券というスキル

「おお、目が覚めたか!」

「あ、どうも。タイチって言います。すごい魔獣ですね、これ」


「だろう? 君は凄いことをしてくれたんだよ! この魔獣はイビルディアといってこの辺りの魔物の中でも最も厄介な魔獣の一匹だったんだよ。こいつは本来村の近くに出没するような魔物じゃあないんだが、最近この辺りにまで出てくるようになっていてね、いつ村の柵を越えてもおかしくない状況だったんだ。こいつが襲って来たら村は壊滅していたんだ。本当にありがとう」


「いやいや、僕はそんな大したことしてないですよ」


「謙遜することはない。あの大型魔獣を倒したんだろう?」

「ま、まあ、そうなんですかね?」


「そうだとも。で、アリアは? ああ、アリア、どうだったんだ?」

「お父さん。あの、タイチさんはやっぱり渡り人なんじゃないかと」


「ははは! そうか! やはりな! アリアは見る目があるな。で、だ。タイチ君。君はぜひ能力を測定して」

「あ、それ終わってます。能力は把握しています。意味はまだ解りませんけど」


「それで? スキルは?! 渡り人には特別なスキルがあるはずなんだが」

「えーっと、図書券? ってかいてあります」


「としょけん??? なんだね? それは?」

「それがボクにもわからないんですよ」


「そ、そうか。とりあえずそのスキルを使ってみてくれないか?」


「えーっと、どうやって?」


「ん? ああ、スキルの発動か。まずはスキルを持っていることの確認だが、これは出来ているね。次にスキルの選択。他にスキルがなければ、としょけん? と頭に思い浮かべるだけでいい。そしてスキルをターゲットに向けるんだが、このスキルがどういうスキルなのかわからないのでとりあえず君が倒した魔獣に向けてくれ。最後にスキル名を声に出えば発動するはずだ」


「は、はい。やってみますね」


 しかし、図書券って。

 図書券ってんなんだよ、図書カードのことか? ってか意味わからん。


 まあとりあえずやってみるしかないか。


 えっとでっかい鹿に向けて頭に図書券スキルを思い浮かべて


「図書券!」


 うわああああ!


 え?

 何これ?

 どうなってんの?


 目を開けると、どこかのお店の中にいる僕。


 落ち着いた雰囲気のお店で、木製の棚やディスプレイが使われた温かみのあるデザインで、棚を見ると新刊や注目書籍が豊富に並べられているだけでなく、古書や専門書など、幅広いジャンルの本が揃っている。


「ようこそいらっしゃいました。こちらは書店『アンティーク・ノート』でございます」


「え? あ? お? なんと?!」


「本日はどういった本をお探しで?」


「ん? え? えーっと、本?!」


「おや、お客さま。当店のご利用は初めてでございますか?」


 いや、ちょっと待って。

 なんで老紳士がきっちりした身なりで鹿の角をかぶってんの?


「あの、ごめんなさい。いろいろ理解が追いつかないです」

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