第5話 僕の狩った魔獣
「おお、出た! 出ましたよアリアさん!」
アリアさんの前に半透明のステータス表が現れる。
すげえ!
これが異世界。
アリアさんは目を丸くしながら自分の前に現れたステータス表を見ている。
しばらくして彼女は我に返ると、慌ててボクの方に向き直り頭を下げてきた。
「とりあえず確認できちゃったみたいです」
「すごい。すごいですよ! タイチさん!!」
アリアは興奮気味に話しかけてきた。
顔が、顔が近いよ、アリアさん!
僕の気恥ずかしさに気づいたのかアリアさんがボクから少し離れる。
「こんなことができるなんて、タイチさんは本当にすごい人なんですね」
「いや、たまたま出来ただけで。とりあえず確認できたけど他の人との比較ができないとどうとも言えないですね」
「あの! タイチさん!」
「は、はい! なんでしょう?」
「やはり、神様はこの村を救うためにタイチさんをここに渡らせたのだと思います! どうか、どうかこの村を救ってください!!」
「は、はい! できる限り頑張ります! ところで、アリアさん。この村で困っている事ってなんなんでしょう? っていうかその前に、めちゃくちゃお腹すいてるんですけど何か食べるものってあります?」
「あ、はい。すぐに用意しますね。お口に合うかどうかわかりませんけど」
「うわー! 助かります! ありがとうございます!」
「ではこちらへどうぞ」
「はーい」
僕はアリアさんの後についていくとテーブルの上にパンが置いてあった。
パンはカチカチに乾いている。
「あの、これ?」
「はい、申し訳ありません。お出しできるものはこれしかなくて」
「えーっと。もしかして村の困りごとって」
「はい。食べ物がないんです」
「なるほど。それは深刻ですね。でも、どうして?」
「実は昨年水害があり、さらに二か月ほど前から村の外に魔獣が多く出てくるようになって、外に出られないんです」
「そうか、だから村には食料が無いと。でも、村の人たちはどうしてたんですか?」
「父が村の近くで狩りをして、野菜は村の中の畑の作物でなんとか」
「あー、なあるほど」
「ただ、今日の夜はごちそうです」
「え?」
「タイチさんが大型魔獣を倒してくれましたから」
全く身に覚えがないけど、僕が狩ってきた魔獣のお肉が食卓に並ぶらしい。
アリアさんの話だとお父さんは僕が倒したという大型の魔獣を解体しているらしい。
食べるものがないのにお腹すいたとかごめんなさいと伝えると、しばらく沈黙が続いてアリアさんが解体現場を見に行こうと誘ってきた。
僕はアリアさんに連れられて、家の裏にある大きな木に向かった。
そこには立派な角を持った鹿のような動物が吊るされていた。
これがボクが今日狩った魔獣か。
何度も言うけど僕はこんなのと戦えるわけないし戦った記憶もない。
僕は一体どうやってこんなのを倒したんだろう?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます