第3話 やはりお姉さんだった

「今は秋の終わり、この季節に冒険者は来ません」


「そうなんですか?」


「ええ。それに服装もこの辺りのものとは違いますし、そもそも空から人が降ってくるはずないんです。ですから渡り人かと」


「えーっと、はい、たぶんそうなんだと思います。ただよくわからないんですよ」


「なにがあったのですか?」


「神様みたいな人と会ったんですけど、いきなり足元の床が無くなって落とされちゃったんです」


「神様?! 落とされた? そんなことが本当に?」


「ああ、まあ信じてもらえないでしょうけど」


「いいえ、やはりタイチさんは渡り人ですね」


「さっきも言われましたけど渡り人? ってなんですか?」


「はい。渡り人は天からやってきたと言われている人々です。皆様、不思議な力を持って現れ、もともとこの地にいる私たちにはない力を持っているのだと言われています」


「うーん、そう言われても。僕は魔法とか使えないし」

「え? 魔法のことはご存じなのですか?」

「ああ、はい。知りません。ちょっと口から出ただけです。本物の魔法は見たことありません。みなさん魔法を使われるんですか?」


「ええ。生活魔法程度であれば村の者ほぼ全員が使えます。もっと強力な魔法となると村でも狩りをするものと、あとはこの村に来る冒険者たちはみな使えますし、魔力量も個人によって大きく異なります」


「ほー! それは興味深いですね。魔法については僕も使えるんでしょうか?」


「なんとも言えませんが、渡り人はこの地の者よりも強力な魔法や技を持っていると言われていますのでおそらく」


「おお、それじゃあ僕にもすごい力が!?」

「はい。言い伝えによれば、ですが」


「じゃあ、早速やってみましょう!」

「え? 何をですか?」


「だから、魔法ですよ!」


「はあ。あの、まずは落ち着いてください。もう少しタイチさんの身に何が起きたのか教えていただけますか?」


「あ、ごめんなさい。興奮してしまって。そうですよね、魔法と聞いて興奮しちゃいました。もう大丈夫です」


「うふふふふ。そうやっていると子どもみたいですね、タイチさん」


「え? あの、僕、何歳に見えます?」

「あ、ごめんなさい。私より年上だと思ってました」

「僕、十四歳です。ごめんなさい」


「私、十六です。私の方がお姉さんなんですね。タイチさん、けっこう大人びていますから、その」


「ああ、気にしないでください。で、あの、僕の身に起こったことなんですけど」


 ボクは彼女に今までのことを説明した。

 アリアはボクの話を真剣に、ときどき相槌を打ちながら最後まで聞いてくれた。


 話し終わると彼女は少し考えてから


「神様に会われて言われたのです、タイチさんは渡り人で間違いありませんね。服装も私たちとは違いますし。さしあたり、タイチさんの力を測定しましょう」


「能力の測定? これはまたそそりますねえ」


「??」


「あ、いや、なんでもありません。で、アリアさん、あなたはこの村のなんなんです?」

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