リコ・ロン!!~うまれかわって~

玉露でんちゃ

序章 万年戦争〈ラ・ファルシオン〉

 戦況は最悪だ。

 わが剣国軍ダルクの被害は甚大である。

 この戦場〈北ラルシオ山地〉での開戦し半日にして、わが軍は全体の60%を損失していた。

 これは異常事態であった。

 実に戦力差100倍で、負けたのだ。ダルク軍1万、ラルシオ軍はわずか100人である。

 敗因はイチ兵士の俺にはわからない…

 だが、おそらく我々は敵をなめていたのだろう。そして追い詰められた魔法軍には強烈な執念があったのだろう…


 その時である。あたりから光の線があらわれ、空に向かって、一点に集まりはじめた。

 その線はあたりの仲間たち、自分も含め、体からも出ていた。

 集まった光は上空で球となり、巨大化を始めていた。

 

 「あれは…?」

 「光の玉…」

 「なんか…」

 「寒いな…」

 「魔法か?」


 あたりがざわつく。

 

 「…」

 

 そのうち誰も動かなくなった。

 段々、意識が薄れていく。

 光が奪われていく…


 リコ・ロン。

 雨の匂い、泥の匂い、濡れた草木の匂い、

 湿った組木の建物に、冷えた空気…

 …

 暖かな、カルボナード。


 真っ暗な視界の向こうに、小さな光が見える。

 星のような、星にしては眩い。

 


 「リコ!…リコロン!」

 聞きなじみのない、元気な声が、俺の名前を呼んでいる。

 目を開く。

 「はやく起きて、リコロン」

 目の前には少女がいた。

 やはり、だれかわからない。

 緑色の瞳に、赤い髪を肩まで伸ばしていた。

 俺を知っているようだけど本当に誰なのだろう?

 「君はだれ?」

 「…あ、あたまおかしくなったの?」

 「いや、ほんとに」

 「…アナベル・ショコラですけど」

 アナベル・ショコラ…知らない名前だ。

 そもそもここはどこだろうか。

 小高い草原、広葉樹の下で俺は寝ていたらしい。

 「ちょっと!どうしたのよ、リコロン!」

 目の前のアナベル少女は困惑していた。

 「どうしたって…」

 そう言われても、なんと答えればいいのか。

 「そうだな...」

 俺はこれまでの経緯を簡潔にすべて話すことにした。

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リコ・ロン!!~うまれかわって~ 玉露でんちゃ @Sinkee

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ