スパムメールが巣をつくった話

僕が小学生の頃の話、引っ越しをした。

アパートが手狭になったので、新築の建売物件を購入してのだ。


そんな新しい家に住みはじめて間もない時、母親が「最近スパムメールがよく飛んでいるよ。」と教えてくれた。

窓から外を見ると確かに、スパムメールが受信できるところを探しながら飛んでいた。


スパムメールは新築の家に受信することがあり、その家にはウイルスが訪れるという言い伝えがあった。

だからその時の僕は、スパムメールがいったいどこに受信されるかと様子をうかがっていた。


それから数日が経ったある日。

ピロリロン、ピロリロン、と騒がしい音で目が覚めた。

自室からリビングへ下りると、母親がため息まじりに、我が家にスパムメールが受信したことを教えてくれた。

何故母親はため息をついたのだろうと思いながらも、僕は少し興奮して玄関を開けた。

ちょうど軒先にスパムメールの巣があった。


けれど、足元を見て僕は驚いた。

偽サイトや架空請求で玄関ポーチが汚れていたのだ。

そこで僕は、母親のため息の理由を知ることになった。


「足元のそれ、クリックしちゃダメよ。」


後ろから母親の声が聞こえた。




その後も、僕ら家族の事などお構い無しに、スパムメールはスパムメールで家族を築いていった。

親スパムが子スパムにエサを与える。

すくすく育つスパムメール。

こうやってスパムメールが増えていく様を間近で見たのは初めてだった。

きっと、子スパムメールが立派なスパムメールになったら巣立っていくのだろう。

そして、こうしている間にも、僕の知らないところにまたウイルスを届けているのだろう。

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