隣の女子のパンツをカンニングした話
僕は中学生の頃、不真面目で、あまり勉強する方ではなかった。
だからテスト勉強もまともにしなかった。
冬休み前の期末テストのことだった。
先生から告げられたのは「点数が悪ければ冬休みは補習」という最悪のシナリオだった。
僕は中学生になって、初めてと言って良いテスト勉強をした。
そしてテスト当日。
問題用紙を見た途端、めまいがした。
まったく分からないのだ。
1つや2つの選択問題があると思って油断していた節はあったが、すべて記述問題だったことが僕を凍りつかせた。
何もできないまま時間だけが過ぎていく。
このままでは冬休みが補習になってしまうと思い、魔が差した残り10分前。
僕は、隣の席の西園寺さんのパンツをカンニングした。
わざと消しゴムを落とし、拾うふりをしてチラッと見たのだ。
カンニングしてはいけないことは分かっていた。
けれど、答案用紙があまりにも真っ白だった。
かがんだ僕の目にとびこんできたのは、レースのフチ取り、控えめながら主張する可愛らしいリボンがあった。
見惚れた、というよりむしろ呆気にとられた。
おかしい。
僕がテスト勉強していたページには絶対に書かれていなかったものだったからだ。
頭の中で教科書をパラパラとめくる。
江戸時代末期、徳川慶喜の大政奉還があって、王政復古の大号令があって、旧幕府軍と新政府軍で戊辰戦争があった……。
そこではまだパンツは出てこない。
あれ、もしかして、と思いさらに頭の中でページを進める。
明治維新の後、西洋の文化が取り入れられると、文明開化により下着がパンツと呼ばれるように……。
僕はそこで思わず席を立ち上がった。
ガタンと椅子が倒れる。
しまった!
勉強する場所間違えた!
時計を見ると、もう僕に考える時間はなかった。
自分で考えることを放棄して、あの一瞬に目に入ってきた情報だけを答案用紙にアウトプットしていた。
チャイムが鳴ると同時に鉛筆を置き、何とかギリギリでパンツを書き終えた。
腱鞘炎スレスレの手を労りながら、これで冬休みに補習という最悪シナリオは避けることができたと安堵した。
隣の西園寺さんの方を見た。
彼女は制服のスカートをぎゅっと手でおさえていた。
「先生!坂本くんがカンニングしてきました!」
先生にその場でチェックされた。
僕の答案用紙に書かれたパンツが、隣の西園寺さんのパンツに酷似していたことからもカンニングは明白だった。
僕は頭が真っ白になった。
パンツのように。
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