おなかの着信を無視したときの話
何年か前のことだ。
夕食を終えた僕は、いつものようにリビングでくつろいでいた。
すると『ギュルルルル』とおなかが着信した。
僕は普段、あまりおなかが鳴るタイプではないので、突然のことに驚いた。
マチガイ便意かなと思い、しばらく待ってみたが、変わらず『ギュルルルル』と鳴り続けているので仕方なくトイレに立った。
ところが、いざ便器のふたを上げ座ってみると『ぷぅーぷぅーぷぅー』と便意が切れた。
やっぱりマチガイ便意だったのかもしれない、重要な便意ならまた着信があるだろうと思い、気にしなかった。
実際、これだけなら年に何回かあることなので特別書き留めることでもない。
問題はそのあとだった。
トイレから出てテレビの続きを見ているときに、また『ギュルルルル』とおなかが着信した。
さっきと同様に便器のふたを上げて座ったところで、これまた同様に『ぷぅーぷぅーぷぅー』と便意が切れたのだ。
しかもそれは翌日、翌々日まで続いた。
僕はろくにテレビを見ることもできず、何と職場にいてもかかってきたので、すっかり参ってしまった。
イタズラ便意だ。
僕は3日目にしてようやくそれに気付いた。
それからは落ち着くまで着信を無視することにした。
『ギュルルルル』と鳴ると反射的にトイレに行きそうになるのを堪え、ほとぼりが冷めるのを待った。
しばらくは昼でも夜でも食事中でもお構いなしに着信していたが、1週間経つ頃にはついに着信がなくなった。
お尻のランプが点滅していたのに気付いたのはその日の夜だった。
あまりに点滅するので、もしやと思い1週間ぶりにトイレに行った。
おなかに留守便が溜まりに溜まっていたのだった。
ずっとマチガイ便意だと思って無視していた着信は、マチガイ便意などではなかった。
ピーッ。
「メッセージ ガ 16ケン アリマス。」
留守便を再生してみると、聞き覚えのある便が流れてきた。
僕は40分かけてすべての留守便を再生し、水に流した。
レバーは4回ひねった。
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