第115話 ハンエイ子爵邸

『主様、美味しかった!また食べたい』

 ツミヒの言葉に、美咲姫とエリックがうんうんと言った感じに頷いてる。

 カスミは控え目で、要求などしないが物凄いがっつき方を見れば、旨かったのは分かる。


「今度は串焼肉かボアステーキ食わせてやる!無茶苦茶旨いぞ」


 外に出ると、5人の衛兵が居た。

 しまった!衛兵の事を忘れてた!と言うのも僕の事は知ってるみたいだけど、衛兵達見覚えが無い会話も無いので馴染めない。

 以前の髭の隊長さん達どうなったんだろ?


 衛兵達、寒い雪道のギルド前で犬ゾリと一緒に待ってた。

「ゴメン!ギルマスの愚痴を聞いてて遅くなった」

「ご案内致します」


 飲み食いしてたのバレバレ!ちょっと気まずい。


 ハンエイ町第二の故郷に思える位に長く居たように思うが、上級冒険者にまでなったのにたった2ヶ月程しか居なかった?

 当然この辺りは来たことも無かった。

 子爵邸はこじんまりとしたたたずまいで、質素な感じを受けた。

 考えてみれば貴族最下位の元男爵邸、普通の男爵は裕福とは言えない、貴族としての最低限の取り繕いなのでこれも当然と言える。


 信じられない事に、僅か1年で僕も豪邸慣れたものと呆れる、紛い物でも僕は国王だから、それなりの住まいは必要だよね。


 ハンエイ子爵はにこやかに迎えてくれた。

「イリス王!遠路ようこそお出で下さいました!私が子爵になれたのも全てイリス王様のお陰で有ります!みすぼらしい邸では有りますが、不自由無く宿泊出来ますよう使用人達に命じて居ります!」


 1年前なら立場は逆、僕なんて貴族に会うことなんて出来なかっただろう。


「お気遣い不要でお願いします、ご存じのように1年前はゲンカイ村で奴隷のような暮らしをして居りました、普通に食事が出来普通の寝具で眠れる事は贅沢ですらありました」



 応接室で出されたお茶を飲みながら思い出した。

 冒険者ギルドで初めてお茶を飲んだっけ。

 お土産代わりにエリックが造った『回復薬』5本『修復薬』5本『治癒薬』5本子爵に渡した。

 薬の説明をすると、物凄く恐縮された。

「し、神薬ではないか!!こんな貴重なもの!」

「ウエルズ公爵とハンエイ公爵には渡して置いた、しまい込まず有意義に使って」



「イリス王、ゲンカイ村は現在『炭坑町』と改名し凄い賑わいの町になりました、明日ご案内致しますが驚かれますよ」

 そうだった、石炭掘って居るんだった。

 村人は子供以外は犯罪奴隷にされたとか…ザマア半分気の毒半分、複雑な気持ちだ。


 入浴しメイドに身体を洗われ、気持ち良く眠った。


 日の出とともに目覚めは癖になってる?衣服を整え…する事が無い。

 勝手に中庭に出て剣の練習を始めた。

 ナオに教えてもらった、相手に当てた瞬間チョイと引く引き切りは、剣撃の威力を増し僕達の力なら両断出来るそうだ。

 剣の素振り、当たったと想定して引く、を繰り返す。

 剣の刃筋を通さないと、力の強い僕達は剣を折ってしまう、刃筋を通し確り振る。


 引き切りは見た目格好良く無い…見た目より威力だ!


 気付けば横でレイラにカスミも素振りしてた。

 二人の素振りを見ると、普通の振りきりしてる。

「振りきらず、地面と水平の位置で止め、その時チョイと引く!

 やって見て!」

 二人は引き切りを始めた。

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