第109話 姿無き窃盗団

 警備兵の目を盗む様に、被害は続出した。

 畑全ての被害は無く、間引いた様にまばらに盗まれて居り、届け出より被害は大きいようだ。


 各村で被害に遭うよりはと、未熟完熟問わず全ての収穫が行われたそうだ。

 これで被害は無くなると思われたやさき、今度は各家庭の収穫倉庫から、少しずつ作物が消えて行く被害報告が出された。


 姿無き窃盗団の噂が大きくなり、国境周辺以外の村や町にも警備兵を常駐させる事になった。

 兵の派遣で多大な予算が消えて行った。

 これ以上の無駄な出費は、交通網整備や国家運営に遅れが出る程影響がある。

 問題解決の為、ナオ達アサシン集団とツミヒ達妖精を連れて、僕が調査に出向く事になった。


 僕は各村の村長に事情聴衆を行った。

 大体の村を廻った頃、事情聴衆の最中ナオが「イリス、嘘を言ってる」と、こっそり耳打ちした。

 リタ達も全員頷いてる。

 ナオにリタ、マリにレインが村長を取り囲み訊問を始めた。

 暫くして「イリス、最初の被害届けは本物!野菜泥棒の現場を見付け問い質したら、金貨を渡され「以後は買い付ける」と商談が成立」

 村長以下村民が結託し、不正売買を行って適当に被害届けを出していたそうだ。


 国境周辺の村々には、今までにも頻繁に食料買い付けにシバレル連邦の兵が訪れていたそうで、法外な高額買い付けに喜んで売っていたそうだ。

 今までのそれは良いが、今回虚偽の報告は完全に犯罪行為だ。

 警備兵に命じ、全員犯罪者として拘束した。


 今回の犯罪は村長達や村人達で、シバレル連邦に罪を問う訳に行かない。

 成る程悪賢い犯罪国家だ、国境壁を強化し完全封鎖しか手立てが無い。

 ナオ達に選り分けして貰い、約7割りの村民を新に犯罪者として拘束し、3割りの無罪村民に村の運営を任せ、残りの拘束した村人達を犯罪奴隷にし、国境防壁強化作業に従事させる事になった。


 軽い気持ちで行った事だろうが、現状国家反逆罪である事を告げ作業させた。

 甘い処置は犯罪者を増やす、どんな気持ちで行った犯罪かは関係無い、見せ占めの意味でも執行は厳密に行われた。

 神の代行の僕の統治時に、犯罪を犯した不運と諦めてもらう。


 一般土木作業者と違い、服役作業は生死を問わず命懸けで行う為、雪が降る前に強化作業が終った。

 元々有った国境防壁を補強、完全封鎖しただけなので見た目より簡単作業だったようだ。


 これでシバレル連邦問題は解決したと思われ、雪がちらちら降りだした頃、国境防壁の向こう側に動きが有った。

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