第106話 寒い国から使者が来た

 捕虜にした黒竜は薬を飲ませ身体を修復し、ナオの判断で解放したそうだ。

 カツ達を襲って返り討ちになった黒竜は、リタとケイが秘かにさばきデイダやカツ達で食ったそうで、その後デイダ達は黒竜を見る度にヨダレを垂らしていたとか、物凄く旨かったようだ。




 2月のこの地は寒く無かった、イリス王国の夏はさぞ暑くなるだろうと覚悟して居たが、予想外ジメジメの湿気が無い、からっとした過ごし易い夏だった。

 国境山脈のお陰で、程よい雨量に温暖で恵まれた大地になっているようだ。


 国境山脈の北にあるイリス辺境侯爵領都と、山脈の南にあるイリス王国王都、山脈を挟んで居るが直線距離は1000㎞程なのに、季候は全く違う。

 大量のぶどう酒の仕込みが終わり、米の収穫が終わったころ金竜と銀竜の長が移住の打診にやって来た。

 黄金竜神、白銀竜神は呼び難いので、最近は金竜銀竜と呼んで居る。

『主様!竜神は雪が降る季節は、家に籠り冬籠りして居ました。

 この地に移住させて頂ければ、冬籠りせずに済みます!移住許可を下さい!』


 爬虫類っぽい竜神、冬眠せず冬籠りか?

 最近は竜達も肉だけで無く、握り飯など米を食い出した、特にカレーは好物になってる。

 移住しても、食料問題は発生しない。問題は住居をどうするかだが、幸い旧シタエズ王都が未開発、元住民がイリス王都から離れるのを拒否、現在も無人状態なので竜達に与える事にした。


 今有る住居は自由に改築して良いと許可を出した。

 元王宮に金竜が住み、豪華な貴族街に銀竜が住むそうだ。

 黒竜はサイズ的に、民家にそのまま居住出来る。

 暮らしが安定したら、何か仕事を与えよう竜神とは言え『働かざる者食うべからず』だからな。

 構想として「黒竜ヤマトの航空便」なんて結構有用だと思う。


 そんな秋もけた頃ウエルズ公爵勅命諜報員がやって来た。

「イリス神様!シバレル連邦から使者が来て居ります!ウエルズ公爵様が対応に困り、自分を伝令に遣わせました!!」


 使者の言い分は「貴重な燃える石を分け与える代わりに、雪に閉ざされない領地を所望する!」との厄介な事を言っているそうだ。

 シバレル連邦の住民は、酒が好きで気の良い人達だが、連邦と言う国に関して言えば油断の成らない無法者と評価される国だそうだ。


 領土侵犯程度平気で行う国で、領土侵犯し「元この地は連邦だった」と平気で嘘を言う関わると録な結果に成らないと、各国が無視していたそうだ。


 酒造りに関しては、全住民が卓越しているとか。

 産業は樹液シロップと燃える石の採掘、それに酒造だけで貿易したい物は無い。

 燃える石は石炭の事だろうが、金竜がゲンカイ村の山に炭鉱が有る事を知って居て、輸入品としての魅力は無い。


 考えは決まった。

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