第105話 たまらん旨そうな匂い

 儂は白銀竜神の長である。

 竜の巣の住み分けで、我らは東に住まいする。

 中央に住むのは黄金竜神達、少数だが力と能力に優れた竜なので我らは一目いちもく置いて居る。

 ただし、理知的な思考行動は、我ら白銀竜神が竜神随一と自負して居る。


 儂が会いに行こうと興味を持ったイリス神が、黄金竜神の長に乗って竜の巣にやって来た。

 見て居ると黄金竜神達は全員イリス神に服従したようだ。

 イリス神のかたわらに、アルフ型妖精がひかえているのに驚いた。

『妖精の姿は…イリス神が契約使役して居ると言うことか』


 秘かに観察して居るとイリス神とアルフ妖精は、火を使い肉を焼き出した。

 ただ焼いて居るだけだが、我慢出来ん!辺りを漂う香りをいで居るだけで腹が減る、旨そうな匂いが竜の巣全体に立ち込んだ。

 旨そうに肉を喰らう黄金竜神を見ていると、配下の白銀竜神達がヨダレをたらしながら肉にふらふら群がり、イリス神とアルフ妖精から旨そうな匂いがする肉を貰って居る。


『儂は白銀竜神の長である!イリス神、肉を貰えんか?』

 長を差し置いて配下の者だけが旨い物を食うことは許さん!との思いで割り込んだ。

 カンゲイ神の目溢めこぼしで生かされて居る竜神達に、旨さを求める余裕は無かった。

 旨い肉と旨い酒を与えてくれたイリス神に、儂ら全員腹を上に向けた。


 竜神の現状を変えてくれそうな期待で、服従契約してしまったが後悔はして居らん!


 黒竜のバカども、殺そうとしている相手とも知らず服従契約して居る。

 バカをからかうのは面白い、服従契約した相手がイリス神である事を教えてやった。

 唖然とした黒龍達のアホ面が笑えた。





 飲み食いが足りた竜神達、このまま寝かせてやるのも良いが、作ったものはたべさせたい。

 焚き火の残り火でトン汁っぽい物を作ってみたい。

 勿論豚肉は無い、猪肉にゴボウを味噌で煮込む、トン汁の味と風味はこれが外せない基本!里芋も収納袋に入っていたので入れたが、見た目猪肉の味噌煮込み料理になってしまった。


 暴飲暴食後のシメ、優しい味の温かい汁物で竜神達満足してスヤスヤ寝て居る。

 この日を境に僕は全竜神を使役する事になった。

『主様、上手く行きましたね』

「ツミヒご苦労様助かったよ!これで黒竜神問題解決した?」

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