第101話 黒竜神はバカだった

 デイダはカツ町へ向かった。

 リツとケイを選んだのは、自分と同じ位早く走れるからで他意は無かったが、頼りになるデイダは思いの外女性メンバーに人気にんきが有り、同伴に選ばれたリツとケイは、ほこらしさと嬉しさからデイダを追い越す迫力の走りをしている。


 黄金竜神を模して生まれた、ダンジョンマスターのエリックは普通に走ってもデイダより速く走る。

 速く走る事に絶対的自信を持っていたデイダは、皆に必死で着いて行く状態にひどく落ち込んだ。


 異常な速度で走るデイダ一行は、水分補給(回復薬)だけで夜通し走り驚異の30時間で、2500㎞離れた旧シタエズ王国ゴクヒン村のカツ町に駆け込んだ。

 最初に目に付いたのは、針ネズミの如く全身に矢が刺さった、首と翼を斬り取られた黒竜神が転がされてる。


 急いだ甲斐はあった。

 左腕を食い千切られたカツは失血死寸前だ。レツやヤン達も酷い傷を負っていた。

 11歳組みリーダーのミヨが、泣きながらカツにすがり付いてる。

 瀕死状態のカツは、意識がなく修復薬を呑み込めない。

「ミヨ!泣いてる暇が有るなら、口移しで薬をカツに飲ませろ!!」


 ビクッとして泣き止んだミヨは、コクコク頷き修復薬を口に含み、カツに口移しで飲ませている、少しずつ慎重に溢さないよう飲ませ、薬瓶1本飲み終わるころカツの顔に血の気がさし、食い千切られた左腕が生えていた。

 薬ダンジョンのイプスを見付けた幸運にデイダは感謝した。





 オーボウダンジョンに向かったレイラ達は、近かった事も有りダンジョンに突入していた。


 ダンジョン内では、ナオやリタにマリとレインの超感覚が非常に助けになる。

 大量発生した時と違い、スライムが見当たらない。

『黒竜神は最奥4階層に居る!』

 美咲姫の言葉で、階段に向かい走った。

「レイラ!スライム」

 ナオの注意で前方を見ると、透明スライムがベチャリ張り付いていた。

「分かり難い!邪魔!!」

 格を突いて破壊、賎貨は無視して階段を駆け降りた。

 色つきスライムは簡単に潰し進む、賎貨を拾うのに時間が掛かる、無視して行けばあっと言う間に4階層に到着した。


 黒竜神は黒に魅了みりょうされるのか、黒スライムを眺めていたが、私達に気付き身構えた。

 狭いダンジョン内、飛ぶことの出来ない黒竜神は只のトカゲ!デイダ程素早く無いけど、剣技は私の方が上手!サッと後に廻り翼を斬り取る、同時に向かったナオが両足を薙ぎ斬った。

 倒れた黒竜神の左右の腕を、ロイとミットが各々斬り取った。


『黒竜神!この薬を飲めば、身体が元に修復する!イリス神の軍門に降れば薬をやる!』

《グッグ?お前はアルフ型妖精か?ついに見付けたぞ!!》

『お前は何を言ってる?お前を見付けたのは私達だ!死ぬか軍門に降るか、2択だ!!答えろ能筋バカ!』

《グッ!……》

「別にお前の様な弱っちい奴、仲間になっても役立たず、殺してさっぱりしよう」

《何を生意気な事を言う!人間め!!》

「お前は正真正銘しょうしんしょうめいバカだな?誰に負けた?データ妖精は手出しせず見ていただけだろう!私達の斬撃が速過ぎて手足翼を斬り取られて居るの気付いて居ないのか?」

《グッ?動き難いと思えば、本当だ!手足が無い?》


 こいつ大丈夫か?冗談で言ったのに、マジで斬られたの気付いて居なかった。



 その頃イリスも旧ムタ辺境伯爵領都、現イリス王都に到着した。


 ロゴス将軍の副官トダマが迎えてくれた。

「イリス神様!お待ちして居りました!!」

「ご苦労!任せっきりにして済まん、黄金竜神はどうしてる?」

 ロゴス将軍の関係者は優秀な人材で、非常に助かってる。

「ショカツ宰相が酒を呑ませ、相手をして居ります!」

「ショカツ宰相?聞いた事のない名だな」

「神託を聞いて、配下にと志願してきた優秀な男です」

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