第88話 2千歳先輩と言って驚かせた

 土間に戻ると、ナカエ皇帝がツミヒの前で硬直して居た。

「ツミヒ?皇帝はどうした」

『主様に恥をかかせないよう、丁寧に挨拶しました』

「丁寧な挨拶しただけで、あの威圧の塊のようなナカエ皇帝が腑抜けるか?」

『能力の一つ、記録の再現を致します』

 ツミヒの黄金の瞳の、右目が青に変わった。


 ◈


「お前は竜神なのか?ミサキ様の事を教えよ!」

『お前は何を言って居る!!ミサキから私の事を聞くなら兎も角、大先輩の私が後輩の事を何故話さねばならぬ!』

「ミサキ様の大先輩だと?」

『ミサキは1万歳、私は1万2千歳、2千歳大先輩で有ろう』

「……2千歳先輩…」

『お前は態度が悪い!主様に対しても会いに来ず呼び着けるとは!教育が必要じゃな!!』


 ◈


 右目が赤くなった。

『詰まらない記録、消去しました』

 録音の様な物だったのか、皇帝との会話を再現したようだ。

 会話の最後の「教育が必要じゃな」の教育は操り洗脳教育、皇帝の腑抜けた状態はそのせいだろう。


「ツミヒが皇帝の教育が必要と判断したなら、現状のままでは危険な存在だったと言う事だろう」

 回りの皆も、皇帝の護衛20人を取り押さえて居る、かなり乱暴に。


「ナカエ帝国は、イリス王国の配下になったはず!

 配下が王に無礼を働く!ナカエもシタエズの様に滅ぼす必要があるようだ!」

『ナカエは竜神には従うが、主様には従わん護衛20もナカエには従うが、主様には従わん!処分が妥当!!』

「ナオ!どう思う?」


「ツミヒの操りが効いてる、放置で問題無い」

「良かった、滅ぼしてばかりじゃ魔王にでもなった気分だ」

「イリス!魔王良いかも」

「レイラ本気?」

「冗談だよ!イリス肩の力抜いて!ミサキって人に会いに行くんでしょ?」


「……このまま一気に東列島王国に行かないと、またズルズル後回しになりそう」

 サコタを探し見回した。

「サコタ!」

 呼べば現れる便利な影。

「はっ!これに!」

「約束した東列島王国の案内を頼む!」

「覚えていて下さって、光栄で有ります!!」


 ナオの判断、ナカエは放置で大丈夫との事、一つ問題解決したと思う事にした。


 全員でサコタの後を追い走り出した。



 南に降り海岸まで出た。

 海岸通りを西に行くと、半島に突き当たった。

 沖合いに長く広がる島が東列島王国だそうだ。

 半島の先端が入江になっていて、多くの船が停泊している。

「船と言っても帆船かよ、捜船に時間掛かりそう」

「ご主人様、今の時季偏西風で列島行きは簡単です、1時間程で到着します」


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