第85話 取り合えず聖教市国を潰す

「……200年後?生きてねぇ!!」

 ジジイ神が言った再会の時期、漠然と聞いて居たが考えると不可能な事を言われた事に気付いた。


 カンゲイ神の神託には、疑う事を許さないフュプノ的効果が付加されている、だがイリスは否定出来た。

 イリスに効果が無かったのは、本人の自覚はないがカンゲイ神にとってイリスが特別な存在だからであった。


「ウエルズ王じゃ無かった、ウエルズ公爵!聖教市国のダンジョンを封鎖して来ます!神託騒動の後始末宜しく!」

 物凄く面倒事になりそうなので、皆と走り去った。


 僕達だけなら、超特急疾走は雑談しながら楽々行ける。

「滅ぼすかは兎も角、金貨しか落とさないダンジョンは、イリス王国管理にして閉鎖しないと大変な事になる」

「イリス閉鎖って?賎貨しか出ないダンジョンより役に立つでしょ?」


「賎貨は価値が低いお金だし、5個が銅貨1枚のパンが賎貨の流通でパンを1個単位で買える様になった。

 でも金貨を無制限に流通させると、現在でも聖教市国近接の東ウエルズ市は既にお金の値打ちがどんどん下がるインフレ状態で、1個2賎貨のパンが銅貨1枚で売られてる。

 バカ高くなった小麦粉で、作れば作る程損をする事になるパン職人は廃業して、王都より西でパン屋をひらく、侯爵門町のパン屋に聞いた事だ」


「東ウエルズ市には職人が居なくなって、商人と農民だけになってると聞いたわ」

「取り合えず聖教市国は潰すけど、その後東ウエルズ市のフォローを上手くやらないと、東ウエルズ市も潰れる」

 僕が説明しても、因果関係が理解出来ないようで、話が途切れた。


「金貨を山にして買い物に来る、聖教市国の教徒達が来なく成れば商人も農民も徐々に生活出来なくなり、東ウエルズ市から離れて少数の農民だけが自給自足状態で細々暮らす村になってしまう」


 僕の話を本当に理解出来てるのは、マリにレインとリタくらいだろう。



 聖教市国は町全体が神殿の様な、異様な町だった。


「カンゲイ聖教市国にようこそ!…じゃ無かった!聖教市国にようこそいらっしゃいませ!」

「危うく神意不敬罪になる所でしたね」

 にこやかに対応していた女性教徒が青ざめた。

「私はカンゲイ神から全権を託されたイリスです、聖王に面会したい!取り次ぎを願えるか?」


「ひっ?…イリス神様?…聖王は不在…逃げ出しました」

 神託の後、聖王に今後の指示を貰おうと聖教徒が訪ねて行ったが、既に逃走したあとだったとか。

 後を追うように聖教徒二人と聖徒4人も逃走して、残って居るのは1000人程の教徒だけだそうだ。


 対応してくれた女性教徒はエリスと言う名で、この酷い状況下で平穏を維持しようと勤めている、人員統率能力が優れたごみ溜めに鶴の様な存在だった。

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