第83話 大神託が響く!

「イリス王!待って居ったぞ!良く帰って来てくれた!!ギリギリ戦禍を免れた!」

 王都でウエルズ王に謁見、第一声は意味不な叫びだった。

 何に疲れて居るのか、これ以上声が出ない様子の王に代わり、ハンエイ公爵が説明してくれた。

「ウエルズ王と我々貴族の総意で、ウエルズ王国はイリス王国の配下になる」

「そんな事突然言われても、困ります」

「シタエズ王国とイリス侯爵領を合わせたイリス王国は、大陸で最大の国になった。ウエルズ王国は解体され、ウエルズ公爵ハンエイ公爵以下貴族領としてイリス王国に組み込まれます」


「それを考えてウエルズ王が、あの憔悴しょうすい状態ですか」

「いやいや、あの疲れ具合はカンゲイ聖教市国の聖徒のせいだ!不在のイリス王に会わせろと日参されて、シタエズ王国制覇してるとも言えず、明日にでもカンゲイ聖教市国に対し宣戦布告する、爆発寸前なのだ」

「カンゲイ聖教市国?初めて聞きます、そんな国が有ったのですか?」

「国土はちょっと大きな町の規模、金貨のみ産出するダンジョンを中心に建国された宗教国家だ」


 キンキラ法衣を先頭に、5人の男女が衛兵を押して入って来た。

「使徒が帰ったと聞いた!その方が使徒か?」

「我が使徒ならどうする気だ?我は名乗らぬ者に名乗らぬ!」

 僕だって王になって、チョッとは偉そうな言い方できるんだぞ。


「儂は聖徒!使徒を我が聖王様の臣下として迎えに来た!用意を致せ!」

「お前は何を言ってる!!イリス大王を臣下に?

 衛兵!!謁見の許可も無く押し入った、この名無しの聖徒達を拘束!不敬罪で処刑する!!

 以後カンゲイ聖教市国は敵国と認定!我が国内で宣教活動している者達の国外追放」

「ま、待て!貴様!!神罰が恐く無いのか!!」

 軽く張り倒して。

「不敬罪に侮辱罪追加!これから邪教集団を壊滅する為、カンゲイ聖教市国と言う邪教国家に攻め込む!!」


 張り倒され、鼻血をだして居る無礼者の髪の毛を掴み、顔をこちらに向かせ。

「我にあのジジイ神が神罰を落とす?笑わせるな!」

 まだ寝てない事を祈りつつ問い掛けした。


「おーーいカンゲイ神!起きてるか?」

❰微睡んでは居るが状況は理解して居る❱

「起きてるなら、この会話回りの者達に聴こえる様に出来ないか」

❰❰……これで万民に聴こえるはずじゃ!イリス以外の者に聴こえて居るか?❱❱

 大陸中の人々に突然神託と思える声が響き渡った。

❰❰儂はカンゲイ神である!大切な客人、入谷 進!イリスの呼び掛けに答えて居る。

 今儂は非常に怒って居る、大切な客人に儂が神罰を落とす?逆にカンゲイ聖教市国に神罰を落としたく成ったぞ!!以後儂の名を使う事を禁ず!!❱❱


 ただ見ているだけだったジジイ神、かなりストレスを感じて居たようだ。


❰❰儂は200年程眠らねばならん、初めて異世界から訪問してくれたイリスを儂は友と思って居る!!イリスはこんなジジイの友は不要かも知れんが、儂が寝た後カンゲイ世界を我が友イリスに託す!❱❱

「チョッと待った!!僕には荷が重い!」

❰❰イリスの助けは大勢居るで在ろう!イリスが神力を授けた者達に任せればよい、気が向けばお主の神術も授けてやれば良い!❱❱


「カンゲイ神!二人会話に戻して!神術の授け方知らんぞ!」

❰神力を授けた時と同じ事じゃ、イリスが神術を授けたいと思えば授けられる❱

 仲間と認めれば神力を授ける事は出来た、神術を授けたいと思えば良いのか?

❰❰では、200年後イリス!再会した時世界がどう変わって居るか楽しみにして居る!❱❱

 カンゲイ神はイリスが管理し易くなるよう、多少のリップサービスは有れど、殆ど本心を言って満足して眠りに着いた。


 神託が終了して、暫く人々は呆然としていた。


 イリスは近くに居る者に、カンゲイ神の声が届けば良い位に軽く頼んだ事だったが、眠りに着く前神力の枯渇を気にせず張り切ったジジイ神の暴走で、人外の知識有る者達全てにも神託は届いた。


 世界中蜂の巣をつついた様な騒ぎが続いた。

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