第79話 待つのに飽きた迎え討つ

 炊き出しに住民は浮かれ、宴会のようになった。

 シタエズ王国最後の足掻き、エズキ公爵軍が攻めて来る重圧感から門前町住民は暫しの解放感に酔いしれた。

 子供達に飲ませたぶどう酒ジュース、女性や大人も飲みたがった為、砂糖水に少量のぶどう酒を入れただけの簡単に作れるジュースなので、全員に振る舞った。


 子供達が寝静まった後、ヤケクソ大盤振る舞いでボウジャク侯爵からの戦利品、酒精は弱いが麦酒(麦焼酎)を振る舞い完全に宴会になってしまった。

 戦闘前夜なのに、笑い声に歌声が聞こえる陽気な雰囲気に町中包まれた。


 門前町から王都まで、歩いて1日の距離だ。

 間に有った二つの村は無人、村民全員イリス王国に逃げて来ている。


 草原が広がる。

 僕達から見ると未開発の勿体無い広大な土地、僅かな仮眠を取り皆で眺めている。

 やっと連合軍が見えた、見えたがいつまで経ってもやって来ない、ナメクジが這うような速度だ。

 隣に居るツミヒが光った。

『主様、結束が意外に硬く操れませんでした』

 ツミヒは失敗の様に言うが、私兵が300人ほど行進から外れ、退いて行く。


 復興の人材は多い方が良い、300人の訓練された兵達、使い途は色々考えられる。


 30分待ったが、全く進んだように見えない。

「皆!待つのに飽きた、迎え討つ!!行くぞ!!!」

 打って出るのにも意味はある、防壁の無い門前町、混戦に成れば町に被害が出る、戦場は町から遠く離れて居ることが好ましい。

 国境警備隊含むイリス王国防衛軍、3000の兵達も遅れる事無く瞬時にエズキ公爵軍に襲い掛かった。


 どさくさ紛れに300の兵達は、上手く離脱していた。

 ツミヒの操りの効果が無いもの達、生かして逃すと後の災いのもと!皆殺し以外無い!もしも捕虜が発生したなら、奴隷商のゴウツかゴウダを呼び売り付けて愁いを無くす。

 超人3000の自軍に弱兵1000の敵軍、勝負に成らず数分で全滅させて居た。


 振り返ると、子供を含めた住民達がかなり近付き野次馬してる。

 こんな世界だ、子供達にも戦争の残虐行為も見せて、早く慣れさせた方が良い、盗賊にしっかり立ち向かえる者になって欲しい。

「お~~い死骸から装備金目の物、剥ぎ取って良いぞ!」


 僕が声を掛けると、大喜びで大人も子供も走って来た。

「使徒王様!ありがとうございます、お金は全て使徒王様にお渡しします!」

「いや、金も取った者に与える!遠慮せず裸に剥ぎ取れ!!」

「「「「「「「おーーっ!!」」」」」」」

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