第76話 レーズン酵母完成

 欠かさず行って来た日課のフリフリ、蓋を開けた。

 プシューとガスが抜ける音がした。

「おっ?やっと発酵が始まった」

 この世界では、酵母の発酵出来んのかと思う程長かった。

 国境警備隊駐屯地がある豚男爵領、イリス王を宣言した最初の足掛かりの領地で仕込んだレーズン酵母、7日で済むはずが30日もかかって発酵を始めた。


 季節がいつの間にか暖かい春になって居て発酵が進んだようだ。

 ガスの発生が止まり、更に3日我慢した。

 ガラス瓶なら一目で分かるもの、竹筒水筒で作って居るため器に出して確認、オドオドの沈殿物オリが出来てる!

 レーズン酵母の完成!


 忙しく動き回ってたレイラやデイダ達も一段落したようで、厨房に隣接した広いラウンジで寛いで居た。

「イリス?慌ててどうしたの?」

「酵母が出来た!フワフワパン作ってみる!」

 王宮厨房の料理人にパン生地を作らせた。

 イリス王国の主食はお米のご飯が徹底されて居て、久し振りのパン生地作り元主食のパン作りに料理人達嬉しそうにパン生地をこねてる、塩少々と砂糖を入れさせヤギ乳も入れた。

 直ぐに焼こうとするのに待ったをかけ、レーズン酵母を入れパン生地をねかせる。


 二次発酵と言っても分からないだろう、3時にパン1個ずつに丸め、夕食に焼くよう指示し仕込みは終った。

 塩握りに始まり、カレーや猪肉の蒲焼かばやきなどの料理指導した結果、僕に絶対的に従う料理人達になった。

 見たことも聞いた事も無い料理レシピの取得は、向上心のある者にとっては願っても無い事だそう。

 当然朝食には味噌汁が出るようになった。



 待ちに待った夕食、献立はフワフワパンにカレーシチュー、蒸し芋に串焼き肉。

 僕の新作パンのお披露目に、ロゴス将軍の近衛に影達も呼び夕食が始まった。


 僕の味覚はカンゲイ世界の素朴な味に慣れていた。

 最近日本の料理を再現、その度に密かに感動していたが、懐かしい母の味がするこのパンには、ちょっと涙がこぼれた。

 試食に集まった皆に絶賛された。

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