第75話 イリス王都

 サロメは必死に走った。

「クソ!王都は遠いな」

 不眠不休の無茶な走りで王宮に駆け込んだのは、イリス達がゴクヒン村の子供達を救出したころだった。


 夜中ではあったが、ウエルズ王に取り次がれ謁見は直ぐに行われた。

 王にイリス侯爵の伝言を伝え「シタエズ王国を占領したなら全てイリス侯爵に与える!」との言質を取り、鬼気迫る勢いでとんぼ返りするサロメだった。


 必死に駆け続け、驚異的に僅か5日で往復した。

 駆け付けたカツ町で、娘リュウサがギルドマスターに就任したのを知り、地団駄踏んで悔しがったそうだ。



 サロメが慌ただしく消えた後、ウエルズ王とハンエイ公爵が防音密室で密かに話して居た。

「諜報員から、イリス達がシタエズ王を含む3000の兵を殲滅皆殺しにしたとの報告を受けた。イリス達は残る2000の敵兵追いシタエズ王国に攻め込んだそうだ」

「兄さん、イリス侯爵はシタエズ王を討伐して、イリス王を名乗って居るそうだぞ」

「イリス侯爵はシタエズ国の王になるで有ろう」

「そうなればウエルズ王国の半分が、イリス侯爵領からイリス王国に成る」

「ウエルズ王国はイリス王と、どの様な関係に成るのが望ましいものか」

「兄さん!いっそイリス王の配下になっては?」

「ふむ……儂も王を辞めウエルズ公爵に成る方が楽で良いな」


 ◈◈◈



 ムタ辺境伯爵領は、ウエルズ王国のイリス侯爵領と、これから占領するシタエズ王国との中間に位置する、既に皆は『イリス王都』と呼び巨大砦都市の復興を手掛けてくれて居る。


 領民は貴族が邪魔さえしなければ、従順で働き者揃い簡単な指示を与えるだけで勝手に豊かになって行く。

「食べ物は自由に何でも食べて良い」の食材自由化政策がよかったようだ。

 衣食住が足りれば、後は放置しても創作欲は湧くようで、工夫された道具や家具が出回った。

 農民も職人も徐々に豊かになって行く。


 イリス王国は、シタエズ王都手前まで支配している、食材自由化政策の普及レイラ達が走り回って農業指導した成果は直ぐに現れた。

 豊かな食材の国、イリス王国への難民大移動が始まった。

 過酷な状態だった、エズキ公爵領の農民が全員決起しイリス王国に逃げ込んだのが始めで、農民の大移動「イリス王国に行けば食に困らん!食べ放題だ!!」との噂がシタエズ王国全土に広がった。


 やがて食糧難から各種職人が王都から逃げ出し、イリス王国に駆け込む、餓死するより一縷いちるの望み噂を信じ官僚に兵士まで難民としてやって来た。

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