第64話 無力感

 この村も麦畑とブドウ園しかない。

 霜柱で根が千切れる事の無い温暖な土地、村人に麦踏みの作業は無い。

 ブドウ園はレーズン1粒残さず取り上げられ、丸裸の木が寒々とした風景になってる。


 痩せ細った子供達に体力が付いたら、イリス王都(豚男爵町から改名)に連れて行き王宮で働かせる事になった。


 毎日確認している、レーズン酵母はまだ出来ない、確認はガスの発生の有無、蓋を開けてプシュっとガスが抜けたら発酵が始まった印だが、温かい(僕達にはそう感じる)とは言っても2月、倍の20日位掛かる?


「育ちつつ有る麦畑を放置して、ゴクヒン村を廃村には出来ない、人手が圧倒的に不足してる…人を農民を増やす方法は…こんな貧しい所に好んで来る人なんて居ないよね」


(イリス王なんて言われても、僕は無力だ)

 ゲンカイ村から逃げ出し走り続けたイリス、動く事が出来ない今、考え過ぎるきらいになっている。



『主様、今暇だよね?』

 ツミヒも僕に慣れてきたのか、話方が少し変わってきた。

「暇と言えば暇…かな?」

『近くにダンジョンが有ります』


「ダンジョン?何を産出するダンジョン?」

『珍しい成金ダンジョンだよ』

「…以前のツミヒダンジョンみたいに、高難易度で残念ダンジョン?」

『成金ダンジョンの隣に、タワーダンジョンが生まれた』

「タワーダンジョン…砂糖が採れる?」

『暇潰し調査する?』


 ダンジョンと聞いて、僕達の回りにクランメンバーが集まってきた。

 僕達が何を話て居るのか気になった子供達も集まってきた。

(そうか!この子達冒険者として鍛えれば生きて行く目標になる?きっとなる!)

「ピサロ、ギルマス権限で村の子供達、12歳の子供達限定でダンジョンに入る許可やれないか?」

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