第62話 ゴクヒン村

 ヒンス村からそれほど離れては居ないが、ゴクヒン村に着いたのは真っ暗になっての事だった。


「皆疲れて居るだろうが、煮炊き用の篝火を出来るだけ沢山燃やして!」

 辺りが明るくなった。


 建物に隠れた多くの人がいる。

「そこの人達!炊き出しに来た!良く頑張って生き抜いていてくれた!!」

「「「ご免なさい!お腹が減って、我慢出来ず言い付けを破ってご免なさい!!」」」

 しきりに謝る子供達が出てきた。

 手にしているのは、レンコン?

 子供達はレンコンを生でかじって飢えを凌いでいた様だ。

「偉いぞ君達!食べ物を見付けて、生き延びた!皆こっちへ来て!美味しいもの作ってるから、食べて元気になって!!」


 3歳位から12歳位の子供達36人が出てきた。


 予想外に多い子供達に、炊き出しの塩握りと豆スープを食べさせている間に僕は家々を回って確認した。

 最悪の予想が的中した……子供達以外の村人全員が死んでいた。


 何故愚王の命令を聞く!民を返り見ぬ貴族に従う!!

 決起する気力を奪われ、食べる物を子供でも見付けたのに、決められた物以外口にせず、それを全て取り上げられ餓死した領民が哀れだ。


 王都に出来るだけ早く行き、民を開放食料援助しなければ、今現在も餓死者出ている事だろう、焦る気持ちを押さえ埋葬を済ませた。


 死者を弔うのは子供達には無理……僕達と変わらない年齢の子供達がちいさな子供達を守って生き残った……僕達と変わらない年齢?

 ナオやピサロの年齢は不明だけど、僕達全員12歳だ…まだ子供と言っていい年齢……12歳か…僕達もよく生き残って、それだけでなく冒険者を極め、全員が貴族になった…12歳、大人では無い、かと言って子供ではなくなってる、微妙な年齢、考えた事無かったけど、カンゲイ世界では12歳に特別な意味が有るのかも知れない。


 埋葬しながらの考え事、こう言った状態の時、緊急事態で無い限り皆そっとして置いてくれる、埋葬が終わり子供達にお別れさせる。


 この村の親子の関係は、僕達とは随分違って居たようで、泣きながらお別れ言ってた。

 この辛いって感情を、理解出来て居ないゲンカイ村の子供達はちょっと哀れかも知れない。


 食事の準備も出来ている。

 36人の子供達を交え、遅い夕食にした。

 夕食の豆スープ、えんどう豆で無く枝豆を使った様だ、味が違う。


 塩握りに、干し肉里芋枝豆のスープ……何か思い出しそう。


「枝豆潰した…名前思い出せない、緑のあんこ…餅米無いけど、小さく丸めたご飯の塩団子、それに緑のあんこを回りに着ける……何か違う?

 緑のあんこはえんどう豆で作る…たしかウグイスあんだった、違う?似た物は出来るだろう、子供達喜ぶぞ!」


 食後僕が始めた、あん団子作り皆が見てた。

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