第56話 シタエズ国【2】
「イリス王様!兵を代表し、要望をお伝えしても宜しいで有りますか?」
「イリス王?」
「はい!我らの王です、イリス様は!殲滅する方が簡単なのに、侵略軍の我らを許し、更に故郷への帰還を許された!
我ら全員イリス様を王と崇め、イリス王の為に働きます!」
「軍の総意は受け取った!要望の前に貴官の姓名と官位を
「失礼しましたイリス王!自分はロゴス!将軍で有ります!」
「ロゴス将軍、要望を聞こう」
「夜は寒くなります、身体を暖めるため荷車の酒を兵達に与えて欲しく陳情致します!」
「荷車に有る物資は自由に消費して良い」
「有り難う御座います!イリス王!」
「この場は安全、焚き火して暖を取れ」
「焚き火しても宜しいので有りますか?有り難う御座います!」
固い物言いだけど、実直そうな初老のロゴス将軍、彼に指示を与えれば兵の末端まで徹底される、良い人材だ。
ゲンカイ村の冬は厳しかった、雪が降る冷たい油断すると室内でも凍死しそうな厳しい環境だった。
ここシタエズはかなり南に位置して居て、野営するのは楽だ。
毛布にくるまるだけで気持ちよく眠れた。
僕達と育ちの違う、マリとレインも普通に眠れて居る様なので、やはりこの地はウエルズ王国より暖かい、夏がどうなるか分からないが住み易そうな国に感じる。
(それがなぜ、食料物資を奪う目的で他国を侵略しなければならない?それほど食糧難になるのは何故だろう)
この良い環境で生まれ育った兵達は、これでも寒く感じるのか眠れずゴソゴソしてる。
ウエルズ王国とシタエズ王国は随分違ったお国柄のようだ。
明日にでも、ロゴス将軍と話をしてみよう、食糧難の原因が何か分かるだろう。
翌早朝、食料物資を自由に消費して良いと、許可したのが良かった様で、当番兵が朝食を作ってる。
朝食と言っても簡単なスープだけだが、凍えた身体に暖かいスープは有り難いようだ。
僕は皆の要望で炊きたてご飯の塩握り作ってる。
「王様が朝食作られるたので有りますか?」
ロゴス将軍が驚いたように声を掛けて来た。
「僕は貧民の出、侯爵になろうが王になろうが、皆と同じに働く」
「シタエズ王国の愚か王や屑貴族とは随分変わった考えで有りますな?……これは当番兵が作った物、お口に合わないでしょうが持ってまいりました」
当番兵を引き連れ、スープを僕達に持ってきてくれた。
「ありがとう、いただく、お礼だ、これを当番兵に食べさせてやってくれ!将軍も食べてみてくれ、旨いぞ!」
「はっ!恐縮で有ります!珍しい食べ物、兵が喜ぶで有りましょう!!」
山盛りの塩握りを、恭しく受け取りロゴス将軍達は、兵達のもとに帰って言った。
「「「「「「「「「「旨い!!!」」」」」」」」」」
暫くして当番兵達と思われる声が聞こえて来た。
僕達がスープに握り飯を食べて居ると、ロゴス将軍が控え目に声を掛けて来た。
「イリス王!先程頂いた珍しい食べ物は何で有りますか?シオニギリと仰っておいででしたが、何で作られた物か教えて頂けないで有りますか?」
「シタエズ王国は家畜の餌に何を与えてる?」
「食糧難で有りまして、家畜を飼う余裕が御座いません…馬は牧草を食べて居ります」
「ヤギは?草と木の皮を食って勝手に育つが?」
「ヤギはそんな物で育つで有りますか?肉にして食って居ります生態は知りませんでした」
シタエズ王国の食料問題は、簡単に解消出来そうだ。
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