第41話 笑顔のサロメ

 王都に到着して流されるまま、慌ただしく20日が過ぎた1月15日、本来の謁見の日に侯爵昇爵式が執り行われた。

 謁見の間には僕が献上した、不格好な剣オークキングソードが飾られている。

 飾られた剣を改めて見ると、禍々まがまがしい異様な剣に見える。



 僕達が整列したのを見て、国王様がおもむろに語った。

「集まって居る貴族の面々も見聞きしたで有ろう、想像を絶する功績の数々、この程度の褒賞で足るものでは無いが、イリス伯爵を侯爵に昇爵、ナオ達クランメンバー全員を男爵から子爵に昇爵する!!」

「「「「「「「「「「「慎んでお受け致します」」」」」」」」」」」


⦅二メートル越える巨漢と噂されて居たが……あの子供が英雄イリス殿か?⦆

⦅噂は宛にならんな!恐ろしい形相の化け物集団と聞いたが、可愛い子供達じゃないか⦆

⦅あんな子供達に盗賊殲滅や、ボウジャク侯爵軍1万を皆殺し出来るか?⦆

⦅数々の偉業は間違い無い!あの集団が成した事だ!⦆

⦅戦闘報告を受けたが、1万の軍勢皆殺しに10分掛からなかったそうだ⦆



 僕らを初見の貴族達がボソボソ話してる。

 しっかり恐れて敵対行為しない事を願うよ!面倒はもう御免だ!



 粗方行事は終った。

 僕達は王都冒険者ギルドに向かった。



 イリス伯爵が侯爵に昇爵、物凄い領地の領主になった事は知れ渡って居るようだが、僕達全員が上級冒険者ってことは、一部を除いて知られて居ないようだ。


 僕達が冒険者ギルドに入ると、騒音がピタリと止まった。


「い、イリス侯爵様!ご、ご依頼で御座いましゅか…」

 受付嬢、緊張でかんだ!

「全員が上級冒険者のイリスクランが、ギルドマスターに挨拶に来ました」

「えっ?上級冒険者?イリスクラン?」

「上級冒険者のイリスクラン、王都では知られて居ないようですね、ハンエイ町冒険者ギルドでは結構有名なんだけど」


 騒ぎを聞き付けギルマス室から青年が出てきた。

「イリスクランの面々!王都冒険者ギルドにようこそ!!

 私はギルドマスターのギンタ!ギュンタの息子です!

 ご報告が有ります!汚い部屋ですが、お入り下さい!」


 ギュンタさんの息子と名乗る、王都冒険者ギルドマスターに促されギルマス室に入った。


 僕達がソファーに座ると、先程の受付嬢がお茶を運んで来た。

「サブギルドマスターのサロメを呼んで来い」

「はい!直ぐ呼んで……」

「お呼びで?ギルマス!」

 受付嬢が全て言い終らない内に、ピサロさんに少し似た所がある女性(経験上オバサンとは決して呼ばない)が入って来た。


「あっ!イリス侯爵様?ピサロからさんざん自慢話聞いて居ります」

「サロメさんは、ハンエイ冒険者ギルドのピサロさんをご存じなのですか?」

「ご存じも何も、ピサロは私の娘ですよ」

 ここで瞬間日本人の習慣が出た。

「えぇ?お姉さんじゃ無く、お母さん?」

「…姉に見えますか?…イリス侯爵様はお若いのに見る目がお有りで!うふふ」


 笑顔のサロメさんはピサロさんに似て美人だけど、日本の知識が初めて役に立った。

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