第34話 暗殺者

 ボウジャク侯爵は何も言えなくなった。

「イリス伯爵達の功績を見習って昇爵したいなら、そうだな…ボウジャク侯爵!シタエズ王国を滅ぼして来い!達成したなら大公に昇爵してやるぞ」

「国王様、ご冗談を」

「冗談では無いぞ、イリス伯爵と10男爵でシタエズ王国を全滅させる戦力である!そのイリス伯爵の昇爵に異議を申し立てたお主なら容易たやすいのでは無いか?侯爵なのだから伯爵以上の働きを期待する!!出兵の準備にかかる費用は国から出すぞ!!

 クズナ、カスデ、ゴミダの3男爵も異議を申し立ての勢いで、ボウジャク侯爵を助け、見事シタエズ王国を滅ぼして来い!!褒美は全員伯爵に昇爵だ!」


 王命が下った!侯爵と3バカ男爵達、苦い顔で退場して行った。





 いつまでも王宮で居候してる訳に行かん。

 僕達はハンエイ公爵の馬車で、祝いに貰った屋敷に向かってる。


「イリス伯爵、頼み事だが…ボウジャク侯爵はイリス伯爵とナオ男爵が決闘したオーボウ子爵とゴーマン伯爵の邪魔者派閥の元締めだ、派閥の残りはクズナ男爵、カスデ男爵、ゴミダ男爵の3男爵だ。王命で纏めて潰す協力をして貰いたい」

「良いですよ何か潰す計画されて居ます?」


「ボウジャク侯爵が、異議を申し立てするのは予想されていた、ウエルズ兄さんと打ち合わせ、逆手に取って無理な王命を降す。

 間違いなく、窮地のボウジャク侯爵は3男爵と共に謀反を起こす」

「成る程、動向を調査して居て謀反を起こすと同時に潰す。で良いですか?……ウエルズ兄さん?ハンエイ公爵様は国王様の弟様?」

「イリス伯爵は話が早くて助かる!全てその通りで間違い無い……到着したようだ」


 王宮の隣がハンエイ公爵邸で、その隣の大邸宅が僕の家になるらしい。

「こんな大邸宅貰って良いのですか?」

「息子が昇爵出来たのは全てイリス伯爵達のお陰だ、この程度ではお礼にもならんが、気持ちを受け取って貰えたら儂も嬉しい」


 玄関前に10人の男女が整列していた。

「「「「「「「「「「お帰りなさいませ御主人様!」」」」」」」」」」

(御主人様って僕らのこと?何か恥ずかしいぞ!)



「イリス伯爵、この者が執事長のボーガン」

「御主人様ボーガンで御座います、ご命じに叶えられる様努力致します」


 用事は全てボーガンに言えば良いそうだ。


 夕食はハンエイギルド酒場の食事と良い勝負、旨い料理だった。

 二人は優秀な料理人だ。


 広い浴室が有り、男女別に一度で済むのは良い。

 日本では毎日入浴していた気がするが、ウエルズ王国では王公上級貴族以外入浴の習慣は無い。



 ここまでは最高だったが、今困ってる。

「ふにょふにょして眠れん!」

 あまりにもフカフカ過ぎて、育ちの悪い僕には眠る事が出来ないベッドに思案してる。

 我慢出来ず、シーツにくるまり床で寝てる。


 真っ暗な深夜、二人の女が音もなく入って来て、無人のベッドにナイフを突き立てた。

(メイドの夜這いかと思えば暗殺かよ!)

 高速で背後に回り首筋に一撃昏倒させた。

「ナオ!起きてる?暗殺者だ!」

 それほど大声で呼んでは居ないが、ナオがとび込んで来た。

「イリス、暗殺者なら容赦せず黒幕を聞き出せる!洗面所汚すよ」




「イリス分かった、王家御用達の暗殺隊と言っても実際は近衛が運用してる。命令したのは近衛副隊長、ボウジャク侯爵の長男コジャック」

「またボウジャク侯爵か、面倒な奴だな」

「暗殺隊の詰所聞き出した、これから襲撃し制圧して来る」

「僕も行く」

 皆起きていた、11人で制圧に走ってる。

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