第16話 迷いの森ダンジョンへ

 ミルクで煮込んだスープは今日も美味しかった。

「ピサロさん、迷いの森ダンジョンの魔物間引きに行って来ます!」

 レイラが元気良く、受付カウンターのピサロさんに挨拶してる。

「気を付けてね!」

 ピサロさん手を小さく振って、笑顔で返事してくれた。

 覚悟を決めて行くしか無くなった。


 僕はどうなってしまったんだろ?

 二歳年上の顔は分かるけど、話をした事の無かったイズル君とヤツデ君、僕が10歳の時村から逃げ出して冒険者になったはず。

 逃げ出す前に「ウエルズ王都で待ってる!二年経ったら必ず来い」と言ってた、ただそれだけの関係の……顔見知り程度の二人がおそらくこの森で死んだ。


 過酷な農作業に雑役で、二人も僕達と同じ鍛えられた身体をしていたはず、棒切れでゴブリン程度殴り殺せただろう。

 なのに、冒険者になって直く後に死んでた。

 一人で魔物に対応すると、他の魔物に奇襲されたら殺されるだろう、だけど二人ならカバーし合って、滅多な事では不覚を取らないはず。


「イリス!シャキッとして!!ダンジョンに入るよ!」

 考え事してたら、いつの間にかダンジョンに着いてた。

 気持ちを切り替えた。

「待ってイリス!!剣を抜いて!構えて……もういい!!イリスは帰って!!ダンジョンでは今のイリスは邪魔になる!!」


 最近優しくて可愛いレイラだったのに、10歳位までのオッカナイ姉さん風を吹かすレイラが復活してる。

「ゴメン、レイラみんな!初めてのダンジョン、チョッと恐くて…でも、もう大丈夫!罠が無いならいつもの魔物退治と同じ…だよね、注意しながら頑張ろう!!」


 僕の言葉に皆チョッと首を捻りながら「「「「「「行こう!」」」」」」って、僕は本当の事言ってない(誤魔化しでは納得しないか)

 それでも皆剛剣を構え、リツとケイは弓を構えてる。

 わずかの間に全員魔物との戦いに慣れて来て、良いパーティーになった。


 ダンジョンに入ると少し開けた場所に、ゴブリンが溢れていた。

 剣も抜かず無防備に入って居たら大変な事になってた。

 リツとケイは矢を連射してる。

 デイダとレイラは慣れたもの、ゴブリンの首をサクサク斬って行く。

 ロイとミットもゴブリンの首を目掛け剛剣を振り回してる。

 あれ程ビビっていた僕も、身体は自然に動くゴブリンの首を切り落として進む。


 広場に溢れていたゴブリンが消えて、後には魔石と魔鉄が転がっていた。

 皆で拾って収納袋に回収する。

「良い収益に為りそうね」

 レイラが嬉しそうに言ってる。

 冒険者になれたから、ゴブリン魔石銅貨5枚で買い取ってくれる、100個で金貨5枚だよ!


 ダンジョンは通路が多いが、所々に広場がありゴブリンで溢れてる。

「成る程ギルドマスターが「スタンピード寸前かも知れん」って言ってた、こう言うことか」

「イリス予想外に魔物が多い、今日は1層ダンジョンボス倒したらお仕舞いにする?」

「魔石の量も凄い事に為りそう、ここまで2000匹はゴブリン倒してる!!ギルドマスターにダンジョンの状態を報告した方が良いね」

 ダンジョン1層はそれほど広く無い「この先がダンジョンボスの部屋よ!」


 注意しながら入ったが、所詮ゴブリンソルジャー1匹、瞬殺だった。

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