25話 忘れた頃にやってくる

「この状況はかなり悪いな。」


杖をひと振りし、朝とクリエラスをアイニコロスから遠ざけながら小夜子はそう言った。


「アンエラスとカンエラスは朝とクリエラスの回復を頼んだ。」


2人はその言葉に頷き2人に駆け寄った。


「朝さん顔には傷ひとつないですね」


「それは小夜子の血液魔法、自分の血を付けて守ったのよ、顔に傷をつけさせたくなかったから、人間と魔女のハーフだから人間に使うことができたのよ」


そう言うとアンエラスは自分の頬に触れた。

薄ら残る小夜子の血で救われたのは朝だけではなかったのだ。


「サリエラスは空を頼んだ。ただの人間を巻き込みたくは無い。」


サリエラスは杖を空に向けた。


「用済みだ」


空はサリエラスの言葉の意味を知っている。

用済みなんて嘘で、本当は能力無しの一般人を傷つけたくないから、別の場所へと移すつもりだということを。


「やめろ」


その声は届くことなく空間は開かれ、空は別の場所へと飛ばされてしまった。



「ここは海のバイト先の」


ガラガラ


「え、また何でここに!?」


海は驚いた様子で空に駆け寄った。


「もしかして迎えに来てくれた?」


「違う」


魔法で飛ばされて来ましたなんて言えないな


「海に伝言だ、帰るの遅くなる」


「何それ!そんなの連絡してくれれば良いのに!」


「それもそうだな」


空は笑いながら手を振った。

その笑顔の中に決意を込めて。



「ガミナを忘れてはいないか?」


「忘れるも何も、休憩しながら戦いを見て楽しんでいたんだから、忘れられるのも当然だ。」


小夜子はガミナの方に体を向けた。


「お腹いっぱいで戦ったら、動きが鈍くなるからな」


「同じく私もお腹いっぱいで鈍くなっててね。まだ本気じゃないんだよ。」


アイニコロスガ小夜子の方に向かって来ている。


「ガミナの隣に小夜子が居るなら無敵だな」


「同じく。ガミナが居てくれたら無敵だ。」


小夜子に攻撃しようとアイニコロスが杖を向けたその時、サリエラスの空間魔法が開かれた。

勢いを付けていたため、避けきれず空間魔法の中に入っていった。


「死ぬなよ?小夜子」


「ガミナこそ。」


ガミナと小夜子の間にアイニコロスは居たのだ。

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