第4話 不幸について

 幸福について語ったのならば、不幸についても語らねばならない。

 幸いにして、お父さんは不幸ではない。

 友人もいる。君たちもいる。

 でも、もし仮に、自分が生きている間に君たちが永遠にいなくなる場面に遭遇するとしたら、それは不幸なことだろう。あるいは、唐突に早逝する死の病にかかったなら、それもまた不幸なことだろう。

 愛する人を失ったり、予期せぬ身体疾患というのは、誰にでも起こりうる偶発的不幸である。

 ただ、そういう偶然性に左右されにくい、不幸になりやすくする要素がある。

 それは貧困だ。

 貧困には二種類ある。金銭的貧困と、関係の貧困である。

 金銭は、ことさら多く持つ必要はないが、少ないと、物質だけでなく、心の余裕まで失ってしまう。稀に、恵まれない経済状況ながら心の余裕を持ち、ある種の清貧の理想として語られる者もいるが、それはまさに稀なことだと心したほうがいい。不幸になる確率を下げたいと思うなら、金銭を稼ぐという行為は、より確実性が高いものである。

 ただ留意すべきは、優先順位だ。身銭を稼ぐことは大事だが、何にもまして、ということではない。心も体も摩耗してまでするものではない。無理はしないほうがいい。健康を害したら、元も子もない。

 続いて関係の貧困についてである。関係の貧困、つまり孤立をしていると、不幸を招きやすくするだろう。この場合の関係というのは、人間関係だけではない。本が大好きで、友人はいなくとも本を読んでいたらすごく充足できるなら、それは本を通じて世界とつながれているから、孤独ではない。虫が好きで、虫を観察していたら充足されるなら、それは虫を通じて自然とつながれているから、それも孤独ではない。あらゆるものとつながることができないとき、それが関係の貧困ということになる。関係の貧困を避ける術は、いろんなことに興味の扉を開いておくことだと思う。

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